■大円弧多面体(その206)

 ダイヤモンドとグラファイト(鉛筆の芯)に次ぐ炭素第3の形として「フラーレン」があげられる.

フラーレンの中でも60個の炭素原子が球殻状に結合したC60はサッカーボール(切頂20面体)にそっくりで,12個の五角形と20個の六角形からなる網目状のカゴ構造を形成している.

 それは炭素原子の結合にかかるストレスが均等に分散しているため他に類を見ないほど安定性が高く化学者たちを興奮させずにはおかなかった.内部に金属イオン(荷電粒子)を閉じこめられることがわかると,世界中の研究者がこぞってこの物質の応用とその可能性に目を向けるようになった.超伝導体,潤滑剤,新薬,電池,触媒等々・・・.

フラーレンは炭素原子が中空らせん状に並んだカーボンナノチューブとともにナノテク新素材の代表選手と知られている.

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【2】カーボン・ナノチューブ(1次元のダイヤモンド)

 1次元の炭素同素体といえば,カルバイン(アセチレンをずっと伸ばしたような炭素の1次元同素体)のようなものを思い浮かべるのが普通であるが,グラファイトをぐるっと管状に丸めたものもれっきとした1次元ダイヤモンドである.

 すべての面が六角形であるような多面体は存在しない.蜂の巣状六角形タイル貼りに五角形タイルを1つ入れるとその部分が盛り上がった曲面となる.五角形タイルの数を増やしていって12枚になったところで閉じたい多面体となる.これを2つに切って両半球にそれぞれ6枚ずつの五角形が含まれる場合(6,6)に,半球間にグラファイトを細い円筒状に巻いたものがカーボン・ナノチューブである.

 カーボン・ナノチューブは1991年,飯島澄男氏(当時NEC)により発見された1次元物質である.興味深いことにグラファイトシートの巻き方によって電気伝導性が大きく変わり,電気をよく伝えるものから電気を伝えにくいものまでいくつかの種類がある.このことから次世代半導体としてカーボン・ナノチューブが注目されている.

 最近ではグラファイトを円錐形に丸めたナノコーンも面白い性質をもつ物質として応用上注目されているという.円錐にするには両端のキャップ部分の五員環を(6,6)ではなく,(1,11),(2,10),(3,9),(4,8),(5,7)の組にする.したがって,ナノコーンの仰角は5種類に限られる.また,らせんを作るには五員環,六員環以外に七員環を入れる必要がある.

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