■フラクタル次元(その7)

 フラクタルが登場するまで,図形の次元は1か2か3に限られていた.幾何学では分数次元を想像することも可能であるが,中でも有名なのは「コッホ雪片」である.コッホ雪片ではまず1辺の長さ1の正三角形を描く.それぞれの辺を3等分し,真ん中の部分を取り除く.そこに同じ長さの辺でできたV字型を置く.この操作を何回も繰り返すと,雪の結晶のような形になる.

 周長は1回の操作ごとに1/3ずつ増えるので,n回後の長さは(4/3)^n→∞である.また,無限に繰り返した結果できるフラクタル図形の面積は

  S=√3/4+√3/4・(1/3)^2・3+√3/4・(1/9)^2・3・4+√3/4・(1/27)^2・3・4・4+・・・=√3/4+√3/12/(1−4/9)=√3/4+3√3/20=2√3/5である.つまり,無限の周囲が有限の面積を囲んでいることになる.

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【1】コッホ曲線

 コッホ曲線では1回の操作ごとに全体の長さは1/3ずつ増えるので,n回後の長さは(4/3)^nである.この曲線は1次元の線ではない.また,同時に2次元でもない.そこで,このような曲線はフラクタル次元をもつといわれ,その次元は

  log4/log3=1.26

で,線の次元よりは上だが,面の次元よりは下になる.

 また,無限に繰り返した結果できるフラクタル図形の面積は不変で,無限の周囲が有限の面積を囲んでいることになる.

 方眼紙を1枚もってきてこの図形にかぶせ,この図形を覆っているマス目の個数を数える.つぎにマス目の大きさを半分にした方眼紙で同じことを繰り返す.もとの図形が線であればマス目の数は2=2^1倍に,面であればマス目の数は4=2^2倍に増える.

 コッホ曲線では,マス目の大きさを1/3にした方眼紙で同じことを繰り返すと画素数は4倍になるから,

  3^d=4→d=log4/log3=1.26

マス目の大きさを半分にした方眼紙であれば,2^1.26倍に増えるのである.

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【2】シェルピンスキーの三角形

 ます単純な三角形を描き,次にもとの三角形の半分の大きさの三角形を3つ作って,もとの三角形のそれぞれの隅におく(三角形を4つの合同な三角形に分割して中央の三角形を取り除く).これを無限回繰り返す.

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 マス目の大きさを半分にした方眼紙で同じことを繰り返すと画素数は3倍になるから,そのフラクタル次元は

  2^d=3→d=log3/log2=1.585

となる.

 その3次元版,ます単純な四面体を描き,次にもとの四面体の半分の大きさの四面体を4つ作って,もとの四面体のそれぞれの隅におく.これを無限回繰り返す.

 マス目の大きさを半分にした方眼紙で同じことを繰り返すと画素数は4倍になるから,そのフラクタル次元は

  2^d=4→d=log4/log2=2

となる.

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【3】シェルピンスキーのカーペット

 ます単純な正方形を描き,次にそれを同じ大きさの9つの正方形に分割して,中央の1個を取り除く.これを無限回繰り返す.

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 マス目の大きさを1/3にした方眼紙で同じことを繰り返すと画素数は8倍になるから,そのフラクタル次元は

  3^d=8→d=3log2/log3

となる.

 その3次元版(メンガーのスポンジ)では,ます単純な立方体を描き,次に同じ大きさの27個の正方形に分割して,体心と面心に位置する7個を取り除く.これを無限回繰り返す.

 マス目の大きさを1/3にした方眼紙で同じことを繰り返すと画素数は20倍になるから,そのフラクタル次元は

  3^d=20→d=log20/log3

となる.

 細分が進むにつれて,メンガーのスポンジの体積はどんどん小さくなるが,表面積は際限なく増え続ける.

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 フラクタル幾何学の父と呼ばれるマンデルブロは,星々がフラクタル的に凸凹に配列されている宇宙モデルを提唱した.もしそうならオルバースのパラドックスはビックバン理論なしでも解決できるからである.

 ユークリッド幾何学が宇宙の滑らかさを表しているのに対して,フラクタル幾何学は宇宙のデコボコをよく表しているといわれる所以である.

 ブロッコリーのフラクタル次元は約2.8,海岸線は1.28,人の肺は2.97であるという.

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