■結び目の体積(その21)
【4】シュレーフリ関数Fn(θ)
シュレーフリ関数S(x,y,z)は,n次元球の最密充填に関する評価式のうち,n=4に対する場合には利用できますが,一般のn次元で使えるようにするために,それを拡張しておく必要があります.また,正単体の諸量を計算するためには,one-parameter化しておいた方が都合がよいと考えられます.
そこで,シュレーフリは,微小変化量dFが
dFn+1(θ)=Fn-1(φ)dF2
すなわち,2次元の球面上の三角形の面積に比例することを用いて,シュレーフリ関数Fn(θ)を
Fn+1(θ)=2/π∫(1/2arcsec(n),θ)Fn-1(φ)dθ
sec2φ=sec2θ−2
F0(θ)=1,F1(θ)=1
で再帰的に定義しました.
dF2=2/πdθ
というわけですが,
F2(θ)=2/π・θ
F3(θ)=2/π(θ−π/6)
となることは簡単に確かめられます.
さらに,シュレーフリは
F2k+1(θ)=F2k(θ)-1/3F2k-2(θ)+2/15F2k-4(θ)-・・・
と展開され,その係数が
tanhx=x-1/3x^3+2/15x^5-17/315x^7+(-1)^(n-1)2^(2n)(2^(2n)-1)Bn/(2n!)x^(2n-1)・・・
と同じであることを示しています.
したがって,奇数次元のシュレーフリ関数に関しては
F3(θ)=F2(θ)-1/3=2/π(θ−π/6)
F5(θ)=F4(θ)-1/3F2(θ)+2/15
F7(θ)=F6(θ)-1/3F4(θ)+2/15F2(θ)-17/315
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Bnはベルヌーイ数なのですが,ベルヌーイ数とゼータ関数との間には,公式
ζ(2k)=(-1)^(k-1)2^(2k-1)B2k/(2k)!π^(2k)
が成り立ちますから,シュレーフリ関数とポリログ関数との関係が再び示唆されたことになります.
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F3(1/2arccos(1/3))=arccos(1/3)/π−1/3
それに対して,F4(θ)を解析的に求めることは難しく,数値積分で近似値を計算することになるのですが,F4(1/2arccos(1/4))の場合,公式
Fn+1(1/2arccos(1/n))=0
を用いて,
F5(1/2arccos(1/4))=0
また,
F5(θ)=F4(θ)-1/3F2(θ)+2/15
より,
F4(1/2arccos(1/4))=1/3(arccos(1/4)/π-2/5)
と計算されます.
このように,シュレーフリ関数を用いると,
d3=√18(arccos(1/3)−π/3)=0.7797・・・
D3=9√3/2(arccos(1/3)−π/3)=1.431・・・
の計算が可能となるし,4次元空間では,
d4=3√5π(1/2arccos(1/4)−π/5)=0.647・・・
D4=192/(5√5)π(1/2arccos(1/4)−π/5)=1.658・・・
となるというわけです.
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