■結び目の体積(その19)

 

ポリログ関数は

  ジログ関数:L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt

  Ln+1(x)=∫(0,x)Ln(t)/tdt

で定義される関数ですが,

  トリログ関数:L3(x)=Σx^3/n^3,

  テトラログ関数:L4(x)=Σx^4/n^4,

  ペンタログ関数:L5(x)=Σx^5/n^5,

などを総称してポリログ関数と呼びます.特に,ジログ関数:

  L2(x)=Σx^n/n^2=-∫(0,x)log(1-t)/tdt

はアーベルの関数とも呼ばれ,

  L2(1)=ζ(2)=π^2/6

となります.

 

 今回のコラムでは,シュレーフリ関数を取り上げます.4次元以上の正多面体を初めて深く研究したのは19世紀の数学者シュレーフリであって,彼が導入したシュレーフリ関数

  Fn+1(θ)=2/π∫(1/2arcsec(n),θ)Fn-1(φ)dθ

  sec2φ=sec2θ−2

  F0(θ)=1,F1(θ)=1

はアーベル関数とも密接な関係があるようです.

 

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【2】基本単体と二面角

 

 また,onon-1・・・o1o0を結んだn次元単体を基本単体(シュレーフリ図形)と呼びます.基本単体では,o0o1,o1o2,・・・,on-1onは互いに直交するので,多重直角単体となっています.

 

  {o2o3・・・oi}上o0,o1のなす角∠o0o2o1=π/p1

  {o0o2}上o1,o3のなす角=π/p2

  {o0o1o4}上o2,o3のなす角=π/p3

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  {o0o1・・・on-2on}上on-2,on-1のなす角=π/pn-1

 

 そして,{o0o1・・・on-2}上on-1,onのなす角

  ∠on-1on-2on=π/pn-1

は,超平面同士が超辺上でなす二面角δの半分です(注:二胞角というべきですが3次元の場合の用語を転用します).

 

 超立方体の二面角はつねに90°ですが,正単体の2面角は,頂点(x,x,・・・,x),底面の中心on-1(1/n,・・・・,1/n),1つの超辺の中心on-2(0,1/(n−1),・・・,1/(n−1))の関係から

  cosδ=1/n

また,双対立方体の2面角は,たとえば,頂点(±1,0,・・・,0)と赤道面の1つの超辺の中心on-2(0,1/(n−1),・・・,1/(n−1))より,

  cosδ=−(n−2)/n

と計算されます.

 

 正三角形の2次元基本単体は直角三角形(π/6,π/3,π/2)なのですが,1次元基本単体(基本線分)は辺の半分の長さの線分です.それが6=3!個集まると元の正三角形の表面積(周長)が構成されます.

 

 また,正四面体の3次元基本単体は重直角四面体なのですが,この重直角四面体ABCDの対面を1,2,3,4で表し,面iと面jの間の二面角を(i,j)で表すと,隣接していない面では

  (1,3)=(1,4)=(2,4)=π/2

一方,隣接している面同士では

  (1,2)=π/3,(2,3)=π/3,(3,4)=π/3

さらに,正四面体の2次元基本単体は直角三角形(π/6,π/3,π/2)であって,24=4!個で元の正四面体の表面積に等しくなります.

 同様に,n次元単体の基本単体数はn!個であることがわかります.また,n次元空間内の正単体の(n−1)次基本単体は,(n−1)次元球面上に射影することによって球面上の基本単体になるのですが,それらの間の二面角は

  δ/2

  π/3(隣接しているとき)

  π/2(隣接していないとき)

であって,単純リー群を使って表現することが可能です.→コラム「無限次元空間の球充填問題(その2)」参照

 

 シュレーフリ関数Fnを用いて,単位超球から得られる楔状体の体積が,

 2^(-n)n!vnFn(θ)

  δ=2θ=arcsec(n)

で与えられることを述べましたが,

  n!Fn(δ/2)

  cosδ=1/n

が出現した理由はこれらのことによっています.

 

 また,シュレーフリ関数は二面角が直角の場合を基準としています.二面角が直角の1次元基本単体を外接円に射影すると,外接円は4等分(=2^2)されます.二面角が直角の2次元単体を外接球に射影すると,外接球は8等分(=2^3)されます.

 

 同様に,二面角が直角の(n−1)次元単体を(n−1)次元球面上に射影することによって,n次元超球の(n−1)次元表面積は2^n等分されますから,n次元楔状体の体積に

  2^(-n)vn

が現れるというわけです.

 

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