■メルカトール図法(その2)

 地球上の緯線は2πRcosφの長さであるが,地図上では2πRに引き延ばされる.その際の拡張比は

  2πR/2πRcosφ=secφ

である.そして,写像が等角であるためには,相似条件

  Δy=RsecφΔφ

を満たさなければならない.

 

 これを現代的に表記すると,微分方程式:

  dy/dφ=Rsecφ

の解:

  y=R∫(0,φ)sectdt=Rlntan(π/4+φ/2)

となるが,もちろん,メルカトールの時代は,ニュートンとライプニッツが微積分を発明するよりずっと前のことである.

 

 この解は平面投影のtan(π/4+φ/2)を引き継いでいるが,これは偶然の一致ではない.複素関数論によれば,複素関数の写像は等角写像となり,複素対数関数

  w=f(z)=lnz

は同心円と放射線よりなる極座標系を直交座標系に変換してくれるのである.

 

 メルカトールの地図には平面図法の性質が遺伝するので,正距図法とはならない.すなわち,地図上の任意の2つの点を結ぶ線分は測地線ではない.また,logがついている分,高緯度における歪みは円筒図法ほど誇張されにくいと思われるが,それでもグリーンランドは南アメリカより大きく表される(実際は1/9の大きさである).

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北緯72度の緯線上のグリーンランドの面積は

実際の面積よりも1/(cos72)^2=10.47倍も大きくなります。

その結果、南アメリカ大陸と同じくらいの面積を持つように見えるのです。

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