■無理数度(その2)
【2】ζ(3)の無理数性
ゼータ関数
ζ(s)=Σ1/n^s
において
ζ(2)=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6
以下,ζ(4)=π^4/90,ζ(6)=π^6/945が続きます.
ζ(2n)はπ^2nの有理関数になる,従って,超越数であることはオイラー以来知られていますが,奇数ベキ級数の和ζ(2n+1)についての類似の関係式は何にひとつわかっていませんでした.(有理数と円周率から四則演算によって得られる数ではないだろうと予想されているが,証明されてはいない.また,log2を含むであろうと推測される.)
ζ(3)=1.202056・・・に収束するものの,この値が無理数であることすらわかっていなかったのです.ところが,1978年に,フランスの無名の数学者アペリによってζ(3)の無理数性が示されました.
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アペリは中央二項係数を用いたζ(3)の表示式
ζ(3)=5/2Σ(−1)^(n+1)/n^3(2nCn)
を用いて,ζ(3)が無理数であることを示すために連分数展開を使いました.ζ(3)が無理数ならば,連分数展開は無限列となります.
アペリはζ(3)が無理数であることを示すために,
ζ(3)=Σ1/n^3=5/2Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)
に基づく連分数展開
6/ζ(3)=5-1^6/(117-)2^6/(535-)n^6/(34n^3+51n^2+27n+5)-・・・
を使いました.ζ(3)が無理数ならば,連分数展開は無限列となります.
アペリの論証は謎の二階漸化式から始まります.そして,一見すると関係なさそうな問題が,あっと驚く洞察によって,思いもよらない解き方に合体していくのです.
アペリが行ったことは,より正確には,二階漸化式
(n+1)^3un+1=(34n^3+51n^2+27n+5)un-n^3un-1
を満たす2つの数列{an}{bn}を構成したことです.たとえば,
an=Σ(nCk)^2(n+kCk)^2
a0=1,a1=5,a2=73,a4=1445,a5=33001,・・・
bnに対する式も,より複雑ではありますが,同様に構成することができます.
bn=Σ(nCk)^2(n+kCk)^2c
c=Σ1/m^3+Σ(-1)^(m-1)/2m^3(mCn)(n+mCm)
b0=0,b1=6,b2=351/4,b4=62531/36,b5=11424695/288,・・・
この漸化式を満たす任意の数列は,
Cα^(±n)/n^(3/2)
(α=17+12√2=(1+√2)^4はx^2−34x+1=0の根)
で指数的に増加(減少)することより,直ちに
bn/an → ζ(3)
が示されます.
このあとのアペリの証明には背理法が用いられています.
e^3=20.08・・・,(1+√2)^4=33.97・・・
より,分母が
(e^3/(1+√2)^4)^n→0
すなわち,ζ(3)が有理数だとすると,1より小さい正の整数ができてしまう(矛盾).
|anζ(3)−bn|<α^(-n)
より,ζ(3)の無理数性を導き出したというわけです.
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