■フリーズの幾何学(その55)
有理数p/qに対応するフォード円は、直径が1/q^2であって、数直線のp/qにおいて接する円である。
一方、分母が高々dの有理数からなる数列を位数dのファレイ数列といい、その各項は高さが1/d^2以上1/(d+1)^2未満の任意の水平線と交わるフォード円と対応している。
位数4のファレイ数列は[0/1,1/4,1/3,1/2,2/3,3/4,1/1]であることが分かる
また、これよりディオファントス近似に関する定理
|α-p/q|<1/2q^2を満たすものが無数に存在することも理解される
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【2】ファレイ数列とディオファントス近似
ファレイ数列では相隣り合う2項[m1/n1,m2/n2]の分母と分子からなる行列式の値m1n2−m2n1は±1である.すなわち,交差積m1n2とm2n1は連続する整数になる.
また,フォードの円列では(m1/n1,1/2n1^2)を中心とする半径1/2n1^2の円と(m2/n2,1/2n2^2)を中心とする半径1/2n2^2の円が接することになる.フォードの円列は重なり合うことはなく,この2つの円の間に入る一番大きな円はその中間分数(m1+m2)/(n1+n2)の円である.
フォードの円列において,直線y=1は∞=1/0に対応すると解釈しよう.すると,有理数p/qに対応するフォードの円は半径1/2q^2で,x軸上の点p/qにおいて接する円となる.
同様に分母が高々dの有理数からなる位数dのファレイ数列の各項は1/d^2≦y<1/(d+1)^2の任意の水平線と交わるフォードの円と対応することになる.
これにより,いくつかのディオファントス近似に関する定理は,(双曲)幾何学的に自明なものとなる.たとえば,任意の無理数αに対して
|α−p/q|<1/2q^2
を満たすものが無数に存在するという定理がそうである.直線x=αが連接する2つのフォードの円p/q,r/sのどちらか一方に交わる.それがp/qであるとすると|α−p/q|<1/2q^2が成り立たなければならないからである.
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[補]フルヴィッツの定理
連続する2つの近似分数をan/bn,an+1/bn+1とすると,それらのうち一方は|α−a/b|<1/2b^2を満たす.連続する3つの近似分数をan/bn,an+1/bn+1,an+2/bn+2とすると,それらのうち少なくともひとつは
|α−a/b|<1/√5b^2を満たす.
この結果から「フルヴィッツの定理」
|α−a/b|<1/√5b^2を満たす有理数a/bは無限に多く存在する.
を証明することができる.
この定数√5は最良のもので,これより大きな数に置き換えることはできないが,黄金比φのようにαの連分数展開が有限個を除いてすべて1になる無理数を除外すれば,フルヴィッツの定理は√5の代わりに√8を用いても成り立つ.
|α−a/b|<1/√8b^2
→コラム「無理数・代数的数・超越数(その5)」参照
次に問題になるのは√2のようなαの連分数展開が有限個を除いてすべて2になる無理数で,それを除くと定理を
|α−a/b|<1/√(221/25)b^2
に改良できる.
同様の改良を続けていったときの定数√5,√8,√(221/25),・・・がラグランジュ数である.それらは
√(9−4/m^2)
において,それぞれm=1,2,5とおいたものである.
m=1,2,5,13,29,34,89,169,194,233,433,610,985,・・・
はマルコフ数と呼ばれる.マルコフ数は2次のディオファントス方程式
x^2+y^2+z^2=3xyz
の解として現れる.たとえば(x,y,z)=(1,1,1),(2,1,1),(5,1,2),(13,1,5),(29,5,2),・・・
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