■eやπに収束する分数列(その20)
【1】無名の数学者アペリの証明
ζ(2n)はπ^2nの有理関数になる,従って,超越数であることはオイラー以来知られていますが,奇数ベキ級数の和ζ(2n+1)についての類似の関係式は何にひとつわかっていませんでした.(有理数と円周率から四則演算によって得られる数ではないだろうと予想されているが,証明されてはいない.また,log2を含むであろうと推測される.)
つい最近までζ(3)は有理数になるかもしれないと思われていたのですが,ところが,1978年に,フランスの無名の数学者アペリによってζ(3)の無理数性が示されました.それを補ったのがポールテンです.ζ(3)=1.202056・・・に収束するものの,ごく最近までこの値が無理数であることすらわかっていなかったのです.
アペリはζ(3)が無理数であることを示すために,漸化式
(n+1)^3un+1=(34n^3+51n^2+27n+5)un-n^3un-1
に基づく連分数展開
6/ζ(3)=5-1^6/(117-)2^6/(535-)n^6/(34n^3+51n^2+27n+5)-・・・
を使いました.ζ(3)が無理数ならば,連分数展開は無限列となります.
興味深いのは,アペリの証明が最先端の研究結果を使ったものではなく,オイラーが解決していたとしても不思議はないとされるような200年前にはすでにわかっていた定理や手法のみでの証明だったことです.
ζ(3)が無理数であるという証明が発表されたとき,学会場はどよめきの渦に包まれ騒然となったそうですが,アペリは非常に話し下手であり,参加者の多くは半信半疑というよりは懐疑的であったと伝えられています.アペリはマイナーな数学者とされていますが,今から考えると当時主流だった秀才数学者集団,ブルバキに押しつぶされた個性豊かな人物だったようです.
ζ(3)はいまだ無理数であることしかわかっておらず,オイラーによる
ζ(3)=2π^2/7log2+16/7∫(0,π/2)xlog(sinx)dx
という結果(log2の有理式×π2)があるばかりです(1772年) .
いまだζ(3)が超越数であるかどうかは知られていませんし,ζ(5),ζ(7),・・・が有理数なのか無理数なのかもわかっていません.アペリの方法はζ(5),ζ(7),・・・の場合の拡張されるに至っていないのです.
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[補]ζ(3)が無理数であることの簡明な別証は「無理数と超越数」塩川宇顕(共立出版)参照
[補]有名ではないが,次のようにゼータ関数に帰着する無限級数展開も知られている.
3Σ1/n^2(2n,n)=ζ(2)
12Σ(2-√3)^n/n^2(2n,n)=ζ(2)
5/2Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)=ζ(3)
なお,ここでは,nCkのことを(n,k)を書いている.
さらに,
36/17ζ(4)
と予想されているが,この式は解析的には未証明である.トライしてみたところ,
Σ1/n^4(2n,n)=1/2*5F4(1,1,1,1,1|1/4)
(3/2,2,2,2| )
ζ(4)=5F4(1,1,1,1,1|1)
(2,2,2,2 | )
以上より,与式の両辺は同じ形の超幾何関数5F4になるところまではわかったものの,これから先が一向に進まなかった.
[補]log2=1−1/2+1/3−1/4+1/5−・・・
π/4 =1−1/3+1/5−1/7+1/9−・・・
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