■eやπに収束する分数列(その7)
[1]eとπの連分数展開
超越数eの連分数展開は,
e=[2;1,2,1,1,4,1,1,6,1,1,8,1,1,10,1,1,12,1,1,14,1,1,16,・・・]
と書け,数字の出方が自然数順になっていることがわかります.すなわち,2次の無理数のように規則的になっているわけですが,eのように超幾何関数の特殊値は3次の無理数よりも,2次の無理数に近いということなのでしょうか?
eもπも超越数ですが,しかし,πの連分数展開
π=[3;7,15,1,292,1,1,1,2,1,3,1,14,2,1,1,2,2,2,2,1,84,2,1,1,15,3,13,1,4,2,6,6,99,1,2,2,6,3,5,1,1,6,・・・]
にはなんの規則性も見あたらないようにみえます.πに現れる数字0〜9については,重複対数の法則と呼ばれるランダムウォークに基づく非常に厳しいランダムネス検定にも十分合格することが確かめられています.πには少なくとも何進法かの表現の下でなにか隠された未発見の規則性があるに違いないと信じている人もいますが,現在のところ,πは最も複雑な数なのです.
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連分数とは,
a1/(b1+a2/(b2+a3/(b3+a4/(b4+a5/b5+・・・)
のような分数を続けた式で,実用上は最初にa0+をつけた形が使われます.整数論で使われる連分数は普通,ak=1,bkが正の整数である標準連分数です.
連分数の第n近似分数wnは
p-1=1,p0=0,pk=akpk-2+bkpk-1
q-1=0,p0=1,qk=akqk-2+bkqk-1 (k=1,2,・・・)
をつくると,wn=pn/qnとして計算できます.wnの値だけが必要ならば,除法は最後の1回だけで済むとうわけです.そして,標準連分数はすべて収束し,その際,近似分数列{wn}は振動しつつ,交互に上下から収束する形になります.
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連分数展開によって
(1+√5)/2=[1;1,1,1,1,1,・・・]
√2=[1;2,2,2,2,2,・・・]
のように,1や2が無限に繰り返されるという規則性を見ることができます.
√3=[1;1,2,1,2,1,2,・・・]
では交互に1,2が現れる循環連分数となります.以下,
√5=[2;4,4,4,・・・]
√6=[2;2,4,2,4,2,・・・]
√7=[2;1,1,1,4,1,1,1,4,・・・]
一般に,√mの連分数展開は循環連分数となり周期性が証明されます.これは既約分数の小数展開が循環小数になることと対比するとおもしろい事実です.
その際,
√m=[q0;q1,q2,・・・,qn-1,2q0,・・・]
という周期nの連分数展開が得られます.
√2=[1;2,・・・]
√3=[1;1,2,・・・]
√5=[2;4,・・・]
√6=[2;2,4,・・・]
√7=[2;1,1,1,4,・・・]
すなわち,どの循環節もqn=2q0=[2√m]で終わっています.
たとえば,√199の展開
√199=[14;9,2,1,2,2,5,4,1,1,13,1,1,4,5,2,2,1,2,9,28,・・・]
をみると,14で始まり28で終わるというのもこの理由によります.
このように,標準無限連分数のうち,部分分母列のあるところから先が巡回的になる循環連分数は2次の無理数(整数係数の2次方程式の解として表される数)に収束します.この性質により,整数項の標準連分数はいわゆるペル方程式:x^2−my^2=d(多くは±1,±4)の解法など整数論の分野で活用されます.
また,√199の循環節の最後の28を除くと13を中心として対称になっていることにも気付かされます.
√43=[6;1,1,3,1,5,1,3,1,1,12,・・・]
√54=[7;2,1,6,1,2,14,・・・]
√76=[8;1,2,1,1,5,4,5,1,1,2,1,16,・・・]
√94=[9;1,2,3,1,1,5,1,8,1,5,1,1,3,2,1,18,・・・]
√1000=[31;1,1,1,1,1,6,2,2,15,2,2,6,1,1,1,1,1,62,・・・]
循環部の最後の項を除いた部分は回文(前から読んでも後から読んでも同じ)になっているという事実も,199のみならず,2次の無理数√mに共通していえる性質です.
√m=[q0;q1,q2,・・,q2,q1,2q0,・・・]
なお,2次の無理数には循環連分数が対応しますが,連分数による実数の最良近似は解を下方と上方から近似していく方法であって,ユークリッドの互除法に直結しています.
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