■エルデシュ・モーデルの定理(その5)

【2】エルデシュの不等式

 

 三角不等式(R≧2r)は,より一般的には「△ABC内の任意の点Pから,各頂点までの距離をR1,R2,R3,各辺(またはその延長)までの距離をr1,r2,r3とすれば,

  R1+R2+R3≧2(r1+r2+r3)

等号は△ABCが正三角形で,Pがその重心であるとき」

で与えられます.

 

 これが「エルデシュの定理」で,この定理はR≧2rの一般化であると考えられます.エルデシュの定理は,簡単に

  A(R)≧2A(r)

と書けますが,Aは算術平均の略で,Rの算術平均≧2(rの算術平均)という意味です.

 

 エルデシュの定理は,算術平均Aを調和平均H,幾何平均Gに置き換えても成り立ちます.すなわち,

  R1R2R3≧8r1r2r3

  1/r1+1/r2+1/r3≧2(1/R1+1/R2+1/R3)

 

 また,2次の基本対称式に対しては

  R1R2+R2R3+R3R1≧4(r1r2+r2r3+r3r1)

も知られています.この種の不等式は美しい.しかし,証明は難しい・・・.

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【3】3次元への拡張

 次に,三角形の代わりに4面体を用います.4面体のある内点から各面までの距離r1,・・・,r4,各頂点までの距離をR1,・・・,R4で表すことにします.

 

 一般に,三角形の重心の性質は四面体に遺伝するので,

  R1+R2+R3+R4≧3(r1+r2+r3+r4)

となるはずですが,ところが,これが成立しないのです.

 

 4面体では

  R1+R2+R3+R4≧√8(r1+r2+r3+r4)

  R1R2R3R4≧81r1r2r3r4

であることが示されています.

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