■二面角の計算(その17)

すべての面が正三角形で構成されている立体をデルタ多面体(正三角面体)といいます.結論を先にいうと,正3角形ばかりを集めると4面体から20面体まで,18面体以外の8種類すべての偶数多面体ができあがります.

 そのうち,正4面体,正8面体,正20面体は正多面体にも分類されるのですが,デルタ多面体はそれらを含めて全部で8種類あることがわかりました.逆にいうと,もし多面体の各面が正三角形ならば8つの多面体の中のどれかひとつであるということになります.

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【1】デルタ12面体の設計

 デルタ12面体とは12枚の正三角形からなる双子の正十二面体とも呼ばれる多面体である.まず,コラム「変形するデルタ20面体に対する疑義」を参考にしてデルタ12面体を設計してみることにする.

 ここでは,1辺の長さを1とする重三角錐(デルタ6面体)の高さhを求めてみることにする.ピタゴラスの定理を使えば中高生でも簡単に確かめることができると思われるが,

  1/(3−h^2)^(1/2)=tan60°=√3

より

  h=√(8/3)=1.63299

となった.

 重三角錐に1本の切れ込みを入れると,口の開いた重三角錐が得られる.一方の開口重三角錐の高さhから開口の大きさwを求める.式はピタゴラスの定理から簡単に求められ,

  w=f(h)=(4−h^2)^1/2sin(3arctan(3−h^2)^-1/2)

 これは他方の開口重五角錐の高さとなるから,

  h=g(w)=(4−w^2)^1/2sin(3arctan(3−w^2)^-1/2)

 ここで,2つの開口重五角錐が歪みなしに接合できるための条件は

  h=g(f(h))   h:0〜1.63299

である.y=x,y=g(f(x))の交点を求めてみると,

  x=1.28917

が近似解となる.

 開口重三角錐2個,すなわち,合同な4面体6個の組み合わせでデルタ12面体ができあがる.

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【2】デルタ12面体(N84)

 8個の頂点と12枚の正三角形からなる分解不可能なザルガラー多面体で,双子の正十二面体とも呼ばれるデルタ多面体である.

 四面体を6個を組み合わせることにしたのだが,意外なことが判明した.6個の表面は繋がるのだが,あいだに空洞ができてしまうのである.写真中央が7個目の四面体である(6+1).

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デルタ12面体の設計では,合同な4面体6個の組み合わせでデルタ12面体ができあがるように設計したつもりであった.いざ作ってみると,予想外のことが起こった.6個の表面は繋がるのだが,あいだに空洞ができてしまうのである.写真中央が第7の四面体である(6+1).

 第7の四面体で空洞を埋めると,デルタ12面体ができあがる.

 今回のコラムでは第7番目の四面体の計量を行ってみたい.短い辺(s)の長さを1とすると,長い辺(l)の長さは1.289179になる.また,6個の四面体は5s1lで構成されるが,第7の四面体は4s2lである.

 6個の四面体は長い辺に短い辺が,第7の四面体は長い辺に長い辺が対向して直交する四面体であるが,それぞれの二面角は,

             6個の四面体   第7の四面体

長い辺周りの二面角    81.6869      114.939

対向する辺周りの二面角  96.1984      114.939

その他の二面角      60.8716      44.6975

となる.

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