■素数距離の定理(その2,杉岡幹生)

 前回の「直線上にある集合で、どの2点間の距離も素数であるようなものは、あるか?」の素数距離の定理で、以下の条件Aを付けた場合も解けましたので、報告します。

<条件A>

  集合の全ての要素に同じ数を加算したり減算したもの(つまり平行移動したもの)は、同一の集合とみなす。

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[定理3]

  直線上にある2点集合で、どの2点間の距離も素数であるようなものは無数に存在する。

  直線上にある3点集合で、どの2点間の距離も素数であるようなものは、双子素数が無限にあれば無数に存在する。しかし双子素数が有限個であれば有限個となる。

  直線上にある4点集合で、どの2点間の距離も素数であるようなものは、{0,2,5,7}のみである。

  直線上にある5点以上の集合で、どの2点間の距離も素数であるようなものは存在しない。

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  以下、証明です。

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[証明]

<条件A>

   集合の全ての要素に同じ数を加算したり減算したもの(つまり平行移動したもの)は、同一の集合とみなす。

 この条件Aのもとで証明する。

 まず準備である。例えば、3点集合{0, 5, 7}とその集合内の要素それぞれにaを加えた{0+a, 5+a, 7+a}は、条件Aによりと同一物になる。

よって以下、集合の最初の一番小さい要素は常に0とする。

 また、集合{・・}内の要素は右のものほど大きいとする。

さらに前回の定理2も適宜援用していく。

http://ikuro-kotaro.sakura.ne.jp/koramu2/20850_j9.htm

 さて、まず直線上にある2点集合を考える。

{0, A}であるが、ここでAは素数である。

 素数が無限にあることはユークリッドにより証明されている。よってAと0の距離、つまりAから0を引いた数(A-0)で素数となるものも無限にあることは当然である。

  以上より、どの2点間距離も素数であるような2点集合は、無数に存在する。

次に3点集合を考える。

{0, A, B}であるが、AとBは素数である。

Aが2の場合と奇素数の場合に分けて考えよう。

[Aが2の場合]

 {0, 2, B}となる。

 ここでBは奇素数であり、且つBから2を引いた数(B-2)も素数となる必要がある。

 そのような素数は、双子素数の大きい方として知られている。例えば、5と7の7、また11と13の13など。

 よって、もし双子素数が無限にあれば、どの2点間の距離も素数であるような3点集合は、無数にあることになる。

 もし双子素数が有限個であれば、どの2点間の距離も素数であるような3点集合は、有限個あることになる。

[Aが奇素数の場合]

 {0, A, B}となるが、A, Bは奇素数であり、且つBからAを引いた数(B-A)も素数となる必要がある。

 つまり、これは「奇素数−奇素数=素数となるものは、存在するか?」という問題になる。

”奇素数−奇素数”は偶数となる。4以上の偶数はだめ(素数でない)なので、許されるのは2のみである。奇素数−奇素数=2となる奇素数のペアというと、それは双子素数である。

よって、もし双子素数が無限にあれば、どの2点間の距離も素数であるような3点集合は、無数にあることになる。

 もし双子素数が有限個であれば、どの2点間の距離も素数であるような3点集合は、有限個あることになる。

 結局つまり、どの2点間距離も素数であるような3点集合は、双子素数の問題にかかっている。

次に4点集合を考えよう。

 {0, A, B, C}であるが、A,B,Cは素数である。

Aが奇素数の場合と2の場合に分けて考えよう。

 まず、Aが奇素数の場合を考えよう。

[Aが奇素数の場合]

 {0, A, B, C}であるが、A,B,Cは奇素数、且つ、集合内の要素間の距離も素数となる必要がある。

しかし、そのような集合は存在しない。

 なぜなら、CからAを引き算した数(C-A)は、4以上の偶数になって素数とはならないからである。

[Aが2の場合]

 {0, 2, B, C}であるが、B,Cは奇素数、且つ、集合内の要素間の距離も素数となる必要がある。

3点集合の考察から、Bは双子素数の大きい方である必要がある。またBとCは奇素数であるから、CはBより2だけ大きい奇素数である必要がある(それ以上離れると差分が4以上の偶数となって、距離が素数でなくなる!)。よって、

「BとCは双子素数の関係にあり(B<C)、且つBが双子素数の大きい方の数である」----@

となる。

 @を満たすような数はp,p+2,p+4だが、そのような”純粋な”三つ子素数は、(3,5,7)しか知られていない。なぜならpが5以上になると、p+2かp+4のいずれかが3の倍数になることが簡単に証明できるからである。

(pが3で割って1余る数ならばp+2が3の倍数に、pが3で割って2余る数ならばp+4が3の倍数になる。<参考>)

 よって、結局、直線上にある4点集合で、どの2点間の距離も素数であるようなものは、{0,2,5,7}のみである。

次に5点以上の集合の場合を考えよう。

 5点以上の集合では、前回の定理2より「そもそも集合自体が存在しない」と分かったので、条件Aがあっても、どの2点間の距離も素数であるようなものは存在しない。

 以上より、定理3が証明された。

証明終わり。

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このように条件Aを付けると、双子素数や三つ子素数の問題に関係するものとなりました。面白いことです。

                                 2022/8/21 杉岡幹生

<参考>

Wikipedia,三つ子素数、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E3%81%A4%E5%AD%90%E7%B4%A0%E6%95%B0

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