■余弦定理と球面余弦定理(その11)

 任意の三角形に対して

  tanα+tanβ+tanγ=tanαtanβtanγ

が成り立つ.

 この式は

  γ=π−(α+β)

として,tanの加法公式を用いることにより容易に証明される.役に立つかどうかは別として,私にとってこの公式は対称性のある美しい公式と感じられる.もちろん,美しく感じるかどうかは主観的であり,強制すべきものではないが,きっと多くの人の美意識にも訴えるに違いない(希望).

 同様に,任意の三角形に対して

  sinα+sinβ+sinγ=4cosα/2cosβ/2cosγ/2

  sin2α+sin2β+sin2γ=4sinαsinβsinγ

  sin3α+sin3β+sin3γ=−4cos3α/2cos3β/2cos3γ/2

  cosα+cosβ+cosγ=1+4sinα/2sinβ/2sinγ/2

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 等式の世界も面白いが,不等式の世界だって奥深いものがある.

 鋭角三角形ならば,算術平均≧幾何平均より

  tanα+tanβ+tanγ≧33√tanαtanβtanγ

前項より,

  tanαtanβtanγ≧33√tanαtanβtanγ

したがって,

  tanαtanβtanγ≧√27=3√3

であるから,

  tanα+tanβ+tanγ≧3√3   (等号は正三角形のとき)

を容易に証明することができる.

 少し気分を変えて,次の不等式はどうだろうか?

(問題)

  sinαsinβsinγ≦3√3/8

(証明)

  2sinβsinγ=cos(β−γ)−cos(β+γ)

           =cos(β−γ)+cosα

  sinαsinβsinγ

 =1/2sinα(cos(β−γ)+cosα)

 ≦1/2sinα(1+cosα)

 これより極大値を計算すると,3√3/8が得られる.なお,この不等式は三角形の外接円,内接円および面積をR,r,△とすれば,

  abc=4R△,(a+b+c)r=2△

また,正弦法則

  a/sinα=b/sinβ=c/sinγ=2R

より,

  abc≦3√3R^3

と同値である.

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(問題)

  sinαsinβsinγ≦(3√3/2π)^3αβγ

 このことから,三角形のブロカールの角ωが,

  8ω^3<αβγ

を満たすことが証明できるという.

 なお,三角形の5心とは内心,傍心,重心,外心,垂心を指しますが,古代ギリシャ人は5心について知っていました.その1500年後,フェルマー点が発見され,さらに1〜2世紀後に9点円の中心,その次がジェルゴンヌ点,19世紀にはいるとナーゲル点やブロカール点などが発見されました.

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