■円の切断(その6)

【6】モーザー数列

数列

  {1,2,4,8,16,31,57,99,163,・・・}

は,公比2の等比数列

  {1,2,4,8,16,32,64,128,256,・・・}

から大きく離れていきます.

 それでは一般式はどのように表されるのでしょうか? 図を描きながらパターンを探してみると,円周上に3点がある場合は三角形の外側に3つの領域,内側に1つの領域,4点の場合は四角形の外側に4つの領域,内側に4つの領域ができる.

  4=3+1,8=4+4

 円周上に5点がある場合は五角形の外側に5つの領域,すぐ内側に10個の三角形領域,中心部に五角形がひとつある.

  16=5+10+1

 円周上に6点がある場合は六角形の外側に6つの領域,すぐ内側に18個の三角形領域,その内側に3つの五角形と3つの四角形,そして中心部に三角形がひとつある.

  31=6+18+6+1

 しかしこのパターンからはどうしてもこれといったアイディアが浮かばないのですが,領域の数は弦の数や交点の数と関係していることは明らかであって,前者はnC2,後者はnC4で計算されます.

 図なしにこれ以上説明することは難しいので,結論を述べますが,  すべての領域にラベルを与えると,ラベルを含む数の個数は0,1,2,3,4のいずれかであって,

  Mn=n-1C0+n-1C1+n-1C2+n-1C3+n-1C4

    =1+(n−1)+(n−1)(n−2)/2+(n−1)(n−2)(n−3)/6+(n−1)(n−2)(n−3)(n−4)/24

    =(n^4−6n^3+23n^2−18n+24)/24 

となることが示されています.

 パスカルの三角形のはじめの5項の和というわけですが,

  n-1C0+n-1C1+n-1C2+n-1C3+n-1C4+・・・+n-1Cn-1=2^(n-1)

ですから,nが大きくなればその答えは2^(n-1)からますます離れていくというわけです.

  M1=1,M2=2,M3=4,M4=8,M5=16,

  M6=31,M7=57,M8=99,M9=163,M10=256,

  M11=386,M12=562,M13=794,M14=1093,

  ・・・,M30=31931,・・・

数列

  {Mn}={1,2,4,8,16,31,57,99,163,・・・}

をこの問題を提起したモーザーにちなんでモーザー数列と呼ぶことにすると,モーザー数列は先入観から間違った答えを予想してしまう例としてしばしば引き合いにだされるものになっています.等比数列(指数関数)でなく,詐欺等比数列・多項式数列(代数関数)であったというわけです.

  Mn=n+nC4+n-1C2

  Mn=nC4+nC2+1=nC4+nC2+nC0

とも表すことができますが,円内にnC4個の交点,nC2個の弦があることから,辺数は

  2nC4+nC2+n

オイラーの公式により,領域の個数は

  Mn+n=2nC4+nC2+n−nC4+2

  Mn=(nC4)+(nC2)+(nC0)

となる.

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