■分割数の合同式(その5)

【1】ラマヌジャンの分割数(保型形式論の端緒)

ラマヌジャンは,重さ12の保型形式

  Δ(z)=qΠ(1-q^n)^24=q{(1-q)(1-q^2)(1-q^3)・・・}^24

=Στ(n)q^n=τ(1)q+τ(2)q^2+τ(3)q^3+・・・

      zは虚部が正の複素数で,q=exp(2πiz)

を考え,その係数τ(n)を計算しました.この式は楕円関数に関する深淵な研究に由来しています。

Δ=q−24q^2+252q^3−1472q^4+4830q^5−6048q^6−16744q^7+84480q^8−113643q^9+・・・

τ(1)=1,τ(2)=-24,τ(3)=252,τ(4)=-1472,τ(5)=4830,τ(6)=-6048,

τ(7)=-16744,τ(8)=84480,τ(9)=-113643,τ(10)=-115920,

τ(11)=534612,τ(12)=-370944,・・・

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 τ(n)はオイラーの分割数のアナローグであり,ラマヌジャン数と呼ばれます.τ(n)は,(m,n)=1すなわちmとnが素ならば,

τ(mn)=τ(m)τ(n)

という乗法的性質をもっています.

τ(2)*τ(3)=-6048=τ(6),τ(2)*τ(5)=-115920=τ(10)

τ(3)*τ(4)=-370944=τ(12),τ(2)*τ(9)=2727432=τ(18)

τ(4)*τ(5)=-7109760=τ(20),τ(3)*τ(7)=-4219488=τ(21)

τ(p^(n+1))-τ(p^n)τ(p)=-p^11τ(p^(n-1))  (漸化式)

τ(6)=τ(2)τ(3)

τ(10)=τ(2)τ(5)

τ(4)=τ^2(2)−2^11

τ(8)=τ(2)τ(4)−2^11τ(2)

τ(9)=τ^2(3)−3^11

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1919年、モーデルがこれらの公式を証明しました。

これにより任意のnに対してτ(n)を計算することができます。

ラマヌジャンはnの約数の累乗に関する問題を解くために、τ(n)がどれだけ大きいか知る必要に迫られました。

その大きさはn^7以下であることを証明し、n^11/2以下であるという予想を示しました。

しかし、τ(n)の大きさに関する予想はあらゆる証明をはねのけました。

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係数τ(n)はnが増加するとき,急激に増加するため,およその大きさを決めるのは難しい問題のひとつであったが,

  |τ(p)|<2p^11/2

であることをラマヌジャンが予想し,1973年にドリーニュがそれを証明しました.この式はp^(-s)=xとおいた2次式

 1-τ(p)x+p^11x^2

の虚根条件(判別式:τ(p)^2-4p^11<0)となっていることに注意して下さい.ラマヌジャン予想はギリギリの予想であって,たとえばpの指数を11/2=5.5からちょっと小さくして5.499としたとすると,|τ(p)|<2p^5.499とはならない素数pが存在するのです.この業績により彼にはフィールズ賞が与えられている.ドリーニュは巨人グロタンディークの肩に乗って,解決に至ったのである.

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