■五次方程式が根の公式を使って解けないこと(その29)

 与えられた条件を満足する図形を作図するのに用具を定規とコンパスに限るのは古代ギリシャ以来の伝統です。定規とコンパスだけで

a)与えられた角を三等分すること(角の3等分問題)

b)立方体の二倍の体積をもつ立方体の一辺を作図すること(立方体倍積問題)

c)円と等積な正方形を作図すること(円の正方形化問題・円積問題)

これらの3つの問題はギリシャの3大作図問題として有名なものですが、実は19世紀になってから作図不能であることが証明されています。

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ギリシャの3大作図不能問題

 正方形の対角線を1辺とする正方形の面積は最初の正方形の2倍であることは明白です。したがって、正方形の2倍の面積の正方形を求める作図問題は簡単に解くことができます。そこで、次なる問題は立方体の2倍の体積をもつ立方体を求めることです。別名デロスの神殿問題と呼ばれるこの問題も簡単に解けるに違いないと思ったのでしょうが、1辺の長さが2倍の立方体の体積はもとの立方体の23 倍の体積、立方体の対角線を1辺とする立方体は33/2 倍の体積になってしまい、簡単には求まりません。

正多角形の作図は円周等分問題という幾何学問題ですが、xn −1=0という代数方程式の解と密接な関係にあります。正5角形の作図は黄金比と関連していて、2次方程式:x2 −x−1=0を解く、すなわち(√5+1)/2を求めることによって可能となりました。ギリシャ人は黄金分割を用いた見事な方法で正五角形の作図に成功したのですが、この方法は二次方程式の幾何学的解法を利用した賢明な方法といえます。

一方、正7角形、正9角形はそれぞれ3次方程式:x3 +x2 −2x−1=0,x3 −3x+1=0に帰着します。また、立方体倍積問題、角の3等分問題、円の正方形化問題(円積問題)のいずれの幾何学的問題も代数方程式に対応していて、たとえば、倍積問題はx3 −2=0,角の3等分問題はx3 −3x−a=0,円積問題はx2 −π=0に帰着します。

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