■五次方程式が根の公式を使って解けないこと(その15)

 ここでは,基本対称式におけるニュートンの公式・ジラールの公式について簡単に述べておきたいと思います.ニュートンの恒等式は,基本対称式とベキ和を結びつけているのですが,特性類の説明を見通しよく行うためにも必要になってくるのです.

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 一般のn次方程式:

  f(x)=a0x^n+a1x^(n-1)+・・・+an=a0Π(x−αi)=0

の根と係数の関係は,

  α1+・・・+αn=−a1/a0

  α1α2+・・・+αn-1αn=a2/a0

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  α1α2α3・・・αn=(−1)^nan/a0

(ジラール)ですが,対称式の基本定理より,n変数のどんな対称式も基本対称式を用いて表すことができます.たとえば,2変数の場合,

  α1^2+α2^2=(α1+α2)^2−2α1α2

  α1^3+α2^3=(α1+α2)^3−3(α1+α2)α1α2

  α1^2α2+α1α2^2=(α1+α2)α1α2

など.

 そこで,n変数対称式:

  sj=α1^j+α2^j+・・・+αn^j

を基本対称式:

  σ1=α1+・・・+αn

  σ2=α1α2+・・・+αn-1αn

  σ3=α1α2α3+・・・+αn-2αn-1αn

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  σn=α1α2α3・・・αn

を用いて表してみることにしましょう.

 余分な変数tを導入して,

 f(t)=Π(1+tαi)=1+σ1t+σ2t^2+・・・+σnt^n

とおくと,

 f'(t)/f(t)=d/dtlogf(t)=Σαi/(1+tαi)=ΣΣ(-1)^kαi^(k+1)t^k

=Σ(-1)^ks(k+1)t^k

 ゆえに,

  f'(t)=f(t)Σ(-1)^ks(k+1)t^k

となり,

  σ1+2σ2t+・・・+nσnt^(n-1)

=(1+σ1t+σ2t^2+・・・+σnt^n)(s1−s2t+s3t^2−・・・)

 両辺の係数を比較することによって,順次

  s1=σ1

  s2=σ1s1−2σ2=σ1^2−2σ2

  s3=σ1s2−σ2s1+3σ3=σ1^3−3σ1σ2+3σ3

  s4=・・・=σ1^4−4σ1^2σ2+2σ2^2+4σ1σ3−4σ4

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  s(k+1)=σ1sk−σ2s(k-1)+・・・+(-1)^(k-1)σks1+(-1)^k(k+1)σ(k+1)=f(σ1,・・・,σ(k+1))

が得られます(ニュートンの公式).

 また,t=1とおくことにより,

  (-1)^ksk/k=Σ(-1)^(i1+・・・+ik)(i1+・・・+ik-1)!/i1!・・・ik!σ^i1・・・σ^ik   i1+2i2・・・+kik=k

が証明されます(ジラールの公式).

 ニュートンの恒等式から

  『α1,α2,・・・,αnの基本対称式は,累乗和:α1^j+α2^j+・・・+αn^jの有理数を係数とする整式で表される』

という結果が導き出されます.不思議なことに,何次の累乗和であっても方程式の係数を使って表せるのです.

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