■五次方程式が根の公式を使って解けないこと(その7)
【6】5次方程式への挑戦(チルンハウスの方法)
そこで,次の問題は5次方程式:
ax^5+bx^4+cx^3+dx^2+ex+f=0
の代数的解法,すなわち四則演算+,−,×,÷と根号√,3√,4√,・・・によって解を求めることでした.いまからほとんど4世紀も昔の問題です.
一般に,n次方程式:
anx^n+an-1x^(n-1)+・・・+ a1x+a0=0
に対してx’=x+an-1 /nan と変換(カルダノ変換)するとx^(n-1)の項が0である方程式に還元できます.3次方程式では2次の項,4次方程式では3次の項を欠いた方程式に変形しましたが,ではもっと低次の項の係数を0にできないか?と考えるのは自然な発想でしょう.
カルダノ・オイラー・フェラーリ・デカルトの解法は,いずれもカルダノ変換から説明される方法ですが,チルンハウスとその弟子たちは,
x^5+a1x^4+a2x^3+a3x^2+a4x+a5=0
に対して
y=x^4+b1x^3+b2x^2+b3x+b4
という変換を行い,うまくb1,・・・,b4を選ぶ方法を考えました(チルンハウス変換).すなわち,根の整式の範囲を超えて,根の分数式にまで考察の対象を拡大したのです.
そうすることによって,一般の5次方程式を
x^5+px+q=0
まで還元できることが判りました.この形は根と係数の関係を発見したジラールにちなんでジラールの標準形と呼ばれているのですが,ここでp=0ならば−qの5乗根としてxは求まります(q=0ならば4次方程式に帰着できます).しかし,さらにp=0にしようとすると,6次方程式を解く必要が生じて,問題がかえって難しくなってしまいました.
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その後も,5次方程式の根の公式に対しては,オイラーやラグランジュなど多くの数学者が挑戦したのですが,だれ一人として成功しませんでした.
ラグランジュは4次方程式までと同様の方法を5次方程式に試みて失敗したのですが,一般のn次方程式のn個の根x1,x2,・・・,xnと1のn乗根ζの式:
Σζ^(k-1)xk
を根とする方程式の性質を詳しく考察し,方程式論に置換群の概念を導入した意義は重要です.ラグランジュの基本的なアイディアは,これまで研究されてきた方程式の根の公式を対称性の視点から見つめ直すことにあったのです.
さらに,ルフィーニは置換群を分類し,5次の置換群の位数を決定しました.これらが布石となって,次第に完全な証明に近づいていくのですが,いよいよそれを証明する人が登場します.
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