■フェルマーの最終定理と有限体(その25)
【4】x^3+y^3=z^3 on Fp=1(mod3)
前節より,3乗で表される数x^3=aの解の個数が
指数が3の倍数のとき・・・・・3個
指数が3の倍数でないとき・・・0個
で与えられることが理解されます.
p=1(mod3)の場合,Npは複雑となるのですが,実は
x^3+y^3=1 (x≠0,y≠0)
の解の個数をMpとおけば,
Np=9+Mp
となることがわかっています.
そこで,
S(u)=(u=x^3を満たす解の個数)
S(v)=(v=y^3を満たす解の個数)
とおくと,F7では
指数が3の倍数のとき・・・・・S(1)=S(6)=3
指数が3の倍数でないとき・・・S(2)=S(3)=S(4)=S(5)=0
で,u+v=1を満たす(u,v)の組は
(2,6),(3,5),(4,4),(5,3),(6,2)
ですから
M7=S(2)S(6)+S(3)S(5)+S(4)S(4)+S(5)S(3)+S(6)S(2)=0
より,N7=9が得られるというわけです.
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次に,
指数が3の倍数のとき・・・・・3個
指数が3の倍数でないとき・・・0個
と結びつけるために,1の原始3乗根
ω=(−1+√3)/2,ω~=(−1−√3)/2
ω^2=ω~,1+ω+ω^2=0
を使うことにします.
ω^k=0 (k=0 mod3)
=ω (k=1 mod3)
=ω^2 (k=2 mod3)
ですから
1+ω^k +ω^2k=3 (k=0 mod3)
=0 (k≠0 mod3)
が成立します.1+ω^k +ω^2kという式は指数kが3で割り切れるかどうかの指標になっているというわけです.
Fpにおける原始根rが与えられたとき,0以外のすべての元は,
a=r^k (k=0〜p-2)
で表されるのですが,このとき,
χ(a)=ω^k,χ~(a)=ω~^k=ω^2k
と定めます.この指標は乗法的性質
χ(m)χτ(n)=χτ(mn)
をもっています.
するとF7(r=3)では
a :1 ,2 ,3 ,4 ,5 ,6
k :0 ,2 ,1 ,4 ,5 ,3
χ(a) :1 ,ω^2,ω ,ω ,ω^2,1
χ~(a):1 ,ω ,ω^2,ω^2,ω ,1
これより
x^3=aなるxが存在する←→χ(a)=1,χ~(a)=1
Σχ(a)=Σχ(r^k)=Σω^k=0
Σχ~(a)=Σχ(r^k)=Σω^2k=0
であり,
S(u)=1+ω^k +ω^2k=1+χ(u)+χ~(u)
S(v)=1+ω^2k +ω^k=1+χ(v)+χ~(v)
ここで,
J(χ)=Σχ(u)χ(v)
J(χ~)=Σχ~(u)χ~(v) (Σはu+v=1をわたる)
なる記号を使えば
Mp=p−8+J(χ)+J(χ~)
より
Np=p+1+J(χ)+J(χ~)
と表されます.
J(χ)とJ(χ~)はヤコビ和と呼ばれる複素数ですが,F7(r=3)の場合は
J(χ)=χ(2)χ(6)+χ(3)χ(5)+χ(4)χ(4)+χ(5)χ(3)+χ(6)χ(2)
=2ω^3+3ω^2=−1−3ω
同様に
J(χ~)=2+3ω,
J(χ)+J(χ~)=1,J(χ)J(χ~)=7
となります.
このように,J(χ)+J(χ~)は実数となり,また,
|J(χ)|^2=J(χ)J(χ~)=p
|J(χ)|=|J(χ~)|=√p
が成り立ちますから,p=1(mod3)のとき
p+1−2√p<Np<p+1+2√p
となることがわかります.Npは各素数pごとにてんでんばらばらになっておらす,そこにはある秩序が存在しているというわけです.
なお,
p+1−2√p<Np<p+1+2√p
という式は楕円曲線と有限体の関係においても登場しますので,それについてはコラム「楕円曲線と有限体」,「谷山予想・佐藤予想・ラマヌジャン予想」をご参照下さい.ワイルズも20代になったばかりのデビューしたての頃,楕円曲線のゼータ関数についての仕事で数学界に衝撃を与えました.
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