■酔歩の再帰性(その2)

 正方格子のとき,再帰的であることが示されましたが,その他の2次元格子ではどうでしょうか? 結論だけをいうと

正方格子  u2n 〜 (πn)^(-1)

三角格子  u2n 〜 √3/2(πn)^(-1)

六角格子  u2n 〜 3√3/2(πn)^(-1)

カゴメ格子 u2n 〜 2√3/3(πn)^(-1)

 すなわち,再帰的ということになります.これらの結果は,斜交座標を導入すると直交座標と同一視できることから得られますが,詳細については,志賀徳造「ルベーグ積分から確率論」共立出版を参照されたい.

 

 ここで,正方格子の

  u2n 〜 (πn)^(-1)

の1という係数は,配置の仕方に関係するものですが,いかなる2次元格子の点であっても,一般的に

  u2n 〜 q(πn)^(-1)

の形で書くことができそうです.

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 q値が大きいほど再帰しやすいと考えられますが,最後に,q値と配位数の関係をまとめておきます.移れる点の数が多いほど再帰しにくくなることが直感的にも理解されます.

        q値         配位数    充填率

正方格子     1          4     π/4

三角格子   √3/2=0.86    6    √3π/6

六角格子   3√3/2=2.59   3    √3π/9

カゴメ格子  2√3/3=1.15   4    √3π/8

 

 配位数6の三角格子は再帰的,配位数6の立方格子は非再帰的であることはわかりましたが,それでは配位数4のダイヤモンド格子の場合はどうなるでしょうか? ダイヤモンド格子の次元は三次元であっても,配位数は4であり,三角格子の6よりも少ないのですが,・・・

 

 いくら配位数が小さいといっても,三次元では高層ビルのような構造になるので,同じ階に戻ることはあっても,なかなか原点までたどり着けないものと直感されます.また,前節では,最も証明しやすい図形(直交格子)についての結果を示しましたが,大切なのは空間の次元であって,再帰性では次元がものをいうことが理解されます.この問題の場合も,射影によって3次元図形が2次元図形に変換できない限り,格子の形を変えたところで結果は同じはずです.そうでないと連続的なモデル(ブラウン運動)の再帰性と矛盾するからです.

 

 しっかり検証したわけではありませんが,任意の3次元格子の場合も,2次元格子の場合と同様に,

  u2n 〜 q(πn)^(-3/2)

となること,すなわち非再帰的であろうと予想されます.正否は如何に?

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