■ビュフォンの針の問題(その24)

(χ分布と標的問題の関連)

 周辺分布がともに平均0,分散σ2の正規分布となる2次元正規分布

p(x,y)dxdy=1/2πσ2・exp(-(x2+y2)/2σ2)dxdy

において,x=rcosθ,y=rsinθと極座標変換します.ヤコビアンは

D(x,y)/D(r,θ)=r

ですから

p(x,y)dxdy=1/σ2rexp(-r2/2σ2)dr*1/2πdθ

よって,rとr+drの間に落ちる確率は1/σ2rexp(-r2/2σ2)dr

 

 このようにして,レイリー分布が得られますが,言い換えれば,x1,x2が正規分布N(0,1)にしたがい,独立のとき(x12+x22)^(1/2)はレイリー分布にしたがうことになります.レイリー分布はミサイルなどが目標からrだけ離れる分布と考えることができます.なお,振幅rの確率分布はレイリー分布となりましたが,一方,位相θの分布はp(θ)=1/2πすなわち一様分布となります.

 レイリー分布はワイブル分布の1種でもあり,また,自由度2のχ2分布は指数分布ですから,レイリー分布は指数分布にしたがう確率変数の平方根の分布と理解することもできます.応用面では,2次元の標的問題(ミサイルなどの目標地点と実際の着弾地点の距離分布)に適用されるほかに,通信工学分野(電気回路の雑音の特定の周波数について,振幅rと位相θとの組合せはレイリー分布に従う)など極めて重要な応用領域をもっています.また,ポアソン過程で生成された個々の点の最近接点(nearest neighbor)との距離の分布として,あるいはハザードレートを計算すると,h(x)=x/σ^2よりlinearly IFRの性質を持つ寿命分布のモデルとして利用されています.

 

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