■ビュフォンの針の問題(その23)
固定した標的に向けて銃を発砲するとき,銃弾の命中点の分布を考えるのが2次元標的問題です.この問題は任意の次元に拡張して考えることができます.ここで,確率変数xが標準正規分布N(0,1)に従うとき,x2の分布は自由度1のχ2分布,また,n個の変数xiがすべてN(0,1)に従うならば,Σxi2は自由度nのχ2分布になります.すなわち,χ2分布は距離の2乗の和の分布と考えることができますが,そもそも,距離の2乗の和にとくに具体的な意味があるようには思えません.むしろ,2乗を取り去って距離の分布としたほうが問題としては自然です.そこで,χ2分布の平方根分布(χ分布)について考えてみることが必要になります.
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(χ分布の密度関数)
自由度nのχ2分布の確率密度関数
f(x)=1/{2^(n/2)Γ(n/2)}・(x)^(n/2-1)・exp(-x/2) 0≦x<∞
において,x=y2と変数変換すると,dx=2ydyより,χ分布の確率密度関数
f(x)=1/{2^(n/2-1)Γ(n/2)}・(x)^(n-1)・exp(-x^2/2) 0≦x<∞
が得られます.
mean=2^(1/2)Γ((n+1)/2)/Γ(n/2)
variance=2Γ(n/2+1)/Γ(n/2)-{2Γ((n+1)/2)/Γ(n/2)}^2
mode=sqr(n-1) (n>1)
とくに,自由度1のχ分布は
半正規分布:f(x)=1/σsqr(2/π)exp(-x^2/2σ2)
であり,この分布は期待値が0の正規分布:f(x)=1/σsqr(2π)exp(-x^2/2σ2)
をy軸(x=0)で折り返した分布になっています.また,自由度2のχ分布は
レイリー分布:f(x)=x/σ^2exp(-x^2/2σ2)
自由度3のχ分布は
マクスウェル分布:f(x)=2^(3/2)/σ^3x^2exp(-x^2/2σ2)
と命名されています.
χ2分布は主として統計分野で用いられていますが,χ分布,とりわけ,レイリー分布は英国のレイリー卿が音響工学との関連でこの分布を発見したことに由来し,マクスウェル分布は気体分子の速度分布と関係した物理学上の重要な分布関数になっています.
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