■ビュフォンの針の問題(その17)
【3】確率変数の積・商の分布
前節では確率変数の和の密度関数を求めましたが,実は和の分布は特性関数を用いるとより簡単に求めることができます.また,メリン変換などを用いると,確率変数の積,商,代数関数などの分布を得ることができます.ここでは,特性関数やメリン変換に拠らず,ヤコビアンの考え方をもっと一般論化して,和や差だけでなく,積x1*x2や商x1/x2の分布,さらに進んで代数関数(ax1+b)/(cx2+d)の分布などを求めることにします.
(例題)x,y〜N(0,1)のとき,商x/yの分布はコーシー分布:f(x)=1/π(1+x^2)にしたがうことを導いてみましょう.
z=x/y,w=y,すなわち,x=zw,y=wよりヤコビアンは
J=∂(x,y)/∂(z,w)=|w,z|=w
|0,1|
したがって,
p(z,w)=f(zw)g(w)J=1/2πexp{-(z^2w^2+w^2)/2}w
h(z)=∫(-∞,∞)1/2πexp{-(w^2(z^2+1))/2}wdw
=2/2π∫(0,∞)exp{-(w^2(z^2+1))/2}wdw
=1/π(z^2+1)
これはコーシー分布です.なお,積xyの分布は第2種変形ベッセル関数になります.
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