■ビュフォンの針の問題(その11)

 ビュフォンの針の問題はπの値の推定に使われるが,円の中心と落下点までの距離が測定できるならば以下の方法でもπの値の推定は可能である.

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 固定した標的に向けて銃を発砲するとき,銃弾の命中点の分布(ミサイルなどの目標地点と実際の着弾地点の距離分布)を考えるのが2次元標的問題です.

(χ分布の密度関数)

 自由度nのχ^2分布の確率密度関数

f(x)=1/{2^(n/2)Γ(n/2)}・(x)^(n/2-1)・exp(-x/2)   0≦x<∞

において,x=y^2と変数変換すると,dx=2ydyより,χ分布の確率密度関数

f(x)=1/{2^(n/2-1)Γ(n/2)}・(x)^(n-1)・exp(-x^2/2)   0≦x<∞

が得られます.

mean=2^(1/2)Γ((n+1)/2)/Γ(n/2)

variance=2Γ(n/2+1)/Γ(n/2)-{2Γ((n+1)/2)/Γ(n/2)}^2

mode=sqr(n-1)

とくに,自由度1のχ分布は

半正規分布:f(x)=1/σsqr(2/π)exp(-x^2/2σ2)

であり,この分布は期待値が0の正規分布:f(x)=1/σsqr(2π)exp(-x^2/2σ2)

をy軸(x=0)で折り返した分布になっています.

また,自由度2のχ分布は

レイリー分布:f(x)=x/σ^2exp(-x^2/2σ2)

自由度3のχ分布は

マクスウェル分布:f(x)=2^(3/2)/σ^3x^2exp(-x^2/2σ2)

と命名されています.

 χ分布,とりわけ,レイリー分布は英国のレイリー卿が音響工学との関連でこの分布を発見したことに由来し,マクスウェル分布は気体分子の速度分布と関係した物理学上の重要な分布関数になっています.

(χ分布と標的問題の関連)

 周辺分布がともに平均0,分散σ2の正規分布となる2次元正規分布

p(x,y)dxdy=1/2πσ2・exp(-(x2+y2)/2σ2)dxdy

において,x=rcosθ,y=rsinθと極座標変換します.ヤコビアンは

D(x,y)/D(r,θ)=r

ですから

p(x,y)dxdy=1/σ2rexp(-r2/2σ2)dr*1/2πdθ

よって,rとr+drの間に落ちる確率は1/σ2rexp(-r2/2σ2)dr

 このようにして,レイリー分布が得られますが,言い換えれば,x1,x2が正規分布N(0,1)にしたがい,独立のとき(x12+x22)^(1/2)はレイリー分布にしたがうことになります.レイリー分布はミサイルなどが目標からrだけ離れる分布と考えることができます.なお,振幅rの確率分布はレイリー分布となりましたが,一方,位相θの分布はp(θ)=1/2πすなわち一様分布となります.

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