■掛谷の問題(その6)
1917年,掛谷宗一は「長さが1である線分を1回転させるのに必要な最小面積の図形は何か」という問題を提出しました.
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この問題を最終的に解決したのは、ベシコビッチでした。
ベシコビッチ(ロシア)によって「前後を方向転換できるいくらでも面積の小さい図形を作ることができる」ことが証明され,掛谷の針の問題は意外な顛末を迎えました(1927年).
ベシコビッチは各方向に単位長の線分を含むルベーグ測度0の平面集合の存在に帰着しました.その際「ペロンの木」と呼ばれる図形操作と巧妙な平行移動を使って証明するのですが,ハンドルを細かく切り返すジグザグ運動を続けることで,1kmの長さの針でも,切手1枚分の面積の図形の中で頭と尻尾を逆に方向転換できるというのですから,ベシコビッチの証明は直観に反しています.予想外であるうえ,常識ではとても受け入れられものではありません.多くの数学者にとっても予想が裏切られる結果になったわけで,その驚きはいかに大きかったであろうかと推察されます.
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線分をその線の方向にずらしても面積を占めないものとします(線分の移動の性質).
高さ1の正三角形を用意します(正三角形の中では長さ1の針を180°回転させることができます)
この正三角形を真ん中で2つに分けて、重ねると重なった分だけ面積が減ります。この中で針をぐるりと回転させることはできなくなってしまいますが、
線分の移動の性質を使って、針を一つの線から別の線上ぬ移すとき、針の動く範囲をいくらでも小さくできます。
同じように、正三角形を4,8,16,32,64,・・・分割して繰り返していくうちに、図形の面積はどんどん小さくなっていきます。
針は結局60°回転することができますが、これを3つの辺に対して行うと180°回転させることができるのです。
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