■等時曲線(その1)
固定した直線上を円が滑らずに転がるとき、回転円上の固定点のなす軌跡はサイクロイドと呼ばれ、回転円の半径をrとすると
x=r(θ−sinθ),y=r(1−cosθ)
と書くことができます。この曲線は2変数多項式f(x,y)=0の形に表せませんから、代数曲線でありません。サイクロイドにはいくつかの興味深い特性があります。
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【等時曲線】
ガリレオ・ガリレイは16世紀の終わりにピサの斜塔で有名な落体の実験を試みましたが、さらに大聖堂のシャンデリアの動きから振子の等時性を発見しています。振り子の運動方程式:
mldθ2 /d2 t=−mgsinθ
は小さな振幅に限るとsinθ≒θとしてよいので線形の方程式となり、解くことができます。振幅が小さいときの振り子の運動は線形現象の一例で、周期T=2π√l/gが振幅によらないという有名な「振り子の等時性」は振幅が小さい場合に限って成立します。しかし、振幅が大きいと復元力はsinθに比例し、積分は楕円関数となります。楕円積分(初等関数をいくら組み合わせても得られない関数)が登場するため、線形性はくずれ非線形になります。
ホイヘンスはサイクロイドが等時曲線であることを発見しました。等時曲線であるサイクロイドを用いると、周期が振幅に依存しない正確に等時性をもった振り子が作れます。振幅角が大きいとき振子の長さを短くすればよいのですが、等時性からのずれを補正するためにサイクロイドの縮閉線を利用します。サイクロイド振り子の周期はT=4π√r/gです。
サイクロイドはそもそもガリレイによって発見され、ホイヘンスによって振子時計の設計に使われ、そしてパスカルの積分法の研究にも貢献しています。サイクロイド弧が囲む面積は3πr2 (回転円の面積の3倍に等しい)、弧長は8r(回転円に外接する正方形の周に等しい)になります。
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