■ピックの公式の一般化(その16)
ピックの公式(1899年)とは,任意の格子多角形の面積が以下の式で表されるというものである.
A=I+B/2−1
A:格子多角形の面積
I:内部の点の個数
B:境界線上の点の個数
今回のコラムではピックの公式のn次拡大を取り上げるが,Z^2上の格子多角形を4倍に拡大した格子多角形の内部の格子点の個数は必ず奇数である(アコーピャン・田上の定理)
(証)Aは16倍,Bは4倍,したがって,ピックの公式によりIは奇数となる.
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【1】2次元のn拡大
アコーピャン・田上の定理は4拡大の例であるが,ここでは,格子点の点の個数L=I+Bを問題にするため,ピックの公式を並び替えて
L=A+B/2+1
A:格子多角形の面積
L:格子点の個数
B:境界線上の点の個数
とする.
n拡大では
Ln=An+Bn/2+1 (An=An^2,Bn=Bn)
Ln=An^2+Bn/2+1
n=0ではL0=1であり,ひとつの格子点につぶれる.n=−1では
L-1=A−B/2+1=(A+B/2+1)−B=L−B
となり,これは内部の格子点の個数となる.
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【2】3次元の場合のn拡大
単位立方体のn拡大では
Ln=(n+1)^3=n^3+3n^2+3n+1
n=−1では
L-1=−n^3+3n^2−3n+1=−(n−1)^3
となり,これは内部の格子点の個数は(n−1)^3であることを主張するものである.
3次元の場合のn拡大については
[参]ベック,ロビンズ「離散体積計算による組合せ数学入門」シュプリンガー・ジャパン
を参照されたい.
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