■ピックの公式の一般化(その9)

【2】リーブの四面体

 平面上の格子三角形で,その内部および境界に頂点以外の格子点を含まないとき,その格子三角形(基本三角形)の面積は1/2である.これは平面上の項三角形の顕著な特質であり,これを用いてピックの定理を証明することができる.しかし,空間の四面体ではまったく状況が異なる.

  体積=内部の格子点数+面上の格子点数/2−辺上の格子点数/4−1

が任意の格子多面体に対して成り立つならば話は簡単なのだが,そうは問屋が卸さないのである.3次元の任意の格子多面体に対しては内部や境界面上の点の個数から体積を求める式はないという例をあげよう.

  体積=内部の格子点数+面上の格子点数/2−辺上の格子点数/4−1

が成立しない反例をあげると,4点(0,0,0),(1,0,0),(0,1,0),(1,1,z)を頂点とする三角錐(体積z/6)では,

  内部の格子点数=0

  面上の格子点数=4

  辺上の格子点数=4

より

  内部の格子点数+面上の格子点数/2−辺上の格子点数/4−1=0

 この四面体では,

  内部の格子点数=0

  面上の格子点数=4

  辺上の格子点数=4

を変化させることなしに,zとともに体積をいくらでも大きくすることができる.

 リーブの四面体はリーブがR^3において,ピックの定理が成り立たないことを示すために用いた物であるが,リーブの四面体の離散体積は

  L(t)=(z/6)t^3+t^2+(2−z/6)t+1

で与えられる.

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[参]ベック,ロビンズ「離散体積計算による組合せ数学入門」シュプリンガー・ジャパン

[補]4点(0,0,0),(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)を頂点とする基本三角錐の体積は1/6,4点(0,0,0),(1,1,0),(1,0,1),(0,1,1)を頂点とする基本三角錐の体積は1/3,4点(0,0,0),(1,1,0),(1,0,1),(0,1,n)を頂点とする基本三角錐の体積は(n+1)/6.体積がいくらでも大きいような基本四面体が存在するのである.

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