■直観幾何学研究会2022(その44)
【1】有限射影平面
n次有限射影平面では各直線にn+1個の点を含み,各点を通ってn+1本の直線が引けます.ある1点を通ってn+1本の直線が引け,その各々の直線の上に,先の1点以外のn個の点がありますから,この射影平面における点の数は全部で
1+n(n+1)=n^2+n+1
個,直線の数もn(n+1)+1=n^2+n+1で等しくなります.
最も簡単な射影平面は,有限体Z2上の2次元射影幾何であって,ファノ平面と呼ばれています.そして,7個の点p1〜p7を(1〜7)と略記することにして,例えば,7本の直線上の3点の組を(1,2,3),(1,4,5),(1,6,7),(2,4,6),(2,5,7),(3,4,7),(3,5,6)の7組の体系は射影幾何の公理系を満たすことになります.7個の点と7個の直線をもつ有限射影平面を,点Piと直線pj(j=0〜6)に対して
i+j=0,1,3 (mod7)
のときに限って,点Piが直線pj上にあると約束することもできます.
13個の点と13個の直線をもつ有限射影平面は,たとえば,点Piと直線pj(j=0〜12)に対して
i+j=0,1,3,9 (mod13)
のときに限って,点Piが直線pj上にあると約束すると,直線pj上の4点はp12(1,2,4,10),p11(2,3,5,11),p10(3,4,6,12),p9(4,5,7,0),p8(5,6,8,1),p7(6,7,9,2),p6(7,8,10,3),p5(8,9,11,4),p4(9,10,12,5),p3(10,11,0,6),p2(11,12,1,7),p1(12,0,2,8),p0(0,1,3,9)であることが示されます.
射影幾何学の有名な定理:デザルグの定理やパップスの定理は有限射影平面でも成立します.なお,n=4k+1,4k+2の場合にn次の射影平面が存在すれば,
n=x^2+y^2
となる整数が存在するということも証明されています.このことから(nは5,7,9にはなりうるが)n=6,14,21,22,・・・の場合,射影平面が存在しないことがわかります.
[補]nは任意ではなく,奇素数のベキでなければならない.なお,有限個の元と体の構造をもつ数体系が「有限体」である.代数学の教えるところによれば,n元の体(加減乗除の演算が定義された集合)が存在するための必要十分条件は,nが素数(のベキ乗)になっていることで,位数2,3,4=2^2,5の体は存在するが,位数6=2×3の体は存在しない.そして,位数7,8=2^3,9=3^2の体は存在して,位数10=2×5のものは存在しない.位数11,13の集合は体となるが,位数12=2^2×3,14=2×7のなす集合は決して体にはならない.
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【2】有限射影空間
有限射影空間においては,各点を通ってn^2+n+1本の直線が引け,その各々の上にn+1個の点があるから,総計
1+(n+1)(n^2+n+1)=n^3+n^2+n+1
個の点がある.双対性によって平面の総数もこれと同じになる.
これらn^3+n^2+n+1枚の平面の各々の上に,n^2+n+1本の直線があるが,各直線を通ってn+1枚の平面が引けるから,直線をすべて勘定すると,n+1重に数えられるので
(n^3+n^2+n+1)(n^2+n+1)/(n+1)=(n^2+1)(n^2+n+1)a
n=3のとき,各直線上には4個の点が載っているが,全部で40個の点と40枚の平面,130本の直線が含まれている.
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