■直観幾何学研究会2022(その38)

直観幾何学研究会2022ではGeogebraを用いた話題が多かった。また、特別講演はリーマン予想に関するものだった。

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セルバーグは負曲率空間で、閉測地線の長さl(p)を考えることによって、セルバーグは素数とリーマン多様体を結びつけた。

 リーマンのゼータ関数について,簡単に復習しておきましょう.

  ζ(s)=Σn^(-s)

をリーマンのゼータ関数と呼びます.

 

 ζ(s)の重要な性質(の一部)は,テータ関数に関するヤコビの恒等式

  Σexp(−πm^2/t)=√tΣexp(−πm^2t)

すなわち,

  θ(t)=Σexp(−πm^2t)

とおくと,

  θ(1/t)=√tθ(t)

およびガンマ関数

  Γ(s)=∫(0,∞)t^(s-1)exp(−t)dt

から導出されます.

 

 これらを用いると

  ξ(s)=π^(-s/2)Γ(s/2)ζ(s)

      =∫(0,∞)1/2{θ(t)−1}t^(s/2-1)dt

      =π^(-(1-s)/2)Γ((1-s)/2)ζ(1−s)

より,関数等式

  ξ(s)=ξ(1−s)

が得られます.

 

 ゼータ関数は,オイラーの積表示

  ζ(s)=Π(1−p^(-s))^(-1)

を通して素数分布=#{n|素数p≦x}の問題に関係してきます.オイラーはオイラー積表示の関係式を用いて,素数が無限個あること,しかも自然数の中で相当な割合で現れるという事実を証明をしたのですが,これはギリシャ数学の単なる別証ではなく,その後の数学の発展に繋がるものだったのです.

 そして,有名な素数定理(PT)は,漸近分布の形で

  π(x)〜x/logx

と表すことができます.素数は無限個存在し,そして等差数列{a+kn}にも素数は無限に含まれるのですが,素数pでa+knの形のものの分布問題がディリクレの算術級数定理です.

  π(x;a,n)〜C・x/logx   C=1/φ(n)

 

 算術級数定理は素数定理を精密化したもので,初項aの取り方にはよらないのですが,ここで,オイラーの関数φ(n)は1からn−1までの整数のうち,nと互いに素になるものの個数

  φ(n)=#(Z/nZ)

として定義されます.たとえば,n=7の場合,1,2,3,4,5,6なのでφ(7)=6,n=10の場合1,3,7,9がそうなのでφ(10)=4となります.

 

 1760年頃,オイラーは,数nが素因数p,q,r,・・・をもつときに,それらの重複度にかかわらず,

  φ(n)=n(1−1/p)(1−1/q)(1−1/r)・・・

であることを示しました.この原理は「エラトステネスのふるい」によっているのですが,たとえば,10=2・5,44=2^2・11,100=2^2・5^2より,

  φ(10)=10(1−1/2)(1−1/5)=4

  φ(44)=44(1−1/2)(1−1/11)=20

  φ(100)=100(1−1/2)(1−1/5)=40

また,任意の素数pに対して,

  φ(p^n)=p^n(1−1/p)

したがって,

  φ(p)=p(1−1/p)=p−1

となります.

 なお,算術級数定理の証明にはディリクレのL関数

  L(s,χ)=Π(1−χ(p)p^(-s))^(-1)

    χは乗法群(Z/nZ)の1次元表現

が用いられます.

 

 跡公式とは非可換版のポアソンの和公式と考えられますが,数論的にみれば,素数とゼータの零点を橋渡しする公式の総称で,具体的には,

  Σf(p)=Σf~(λ)

の形の等式として書くことができます.ここで,f~はfから決まり,逆にfもf~から定まるフーリエ変換みたいなものと考えて下さい.

 

 正規分布のフーリエ変換は再び正規分布になりますから,まったく無関係に思われるヤコビの恒等式

  θ(1/t)=√tθ(t)

も,オイラー積=アダマール積

  Π(1−p^(-s))^(-1)=−π^(-s/2)/s(1−s)Π(1−s/λ)

も同じ範疇に属する公式であるということになります.

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