■四角い車輪のついた自転車(その1)

タイヤが歪んでいるとき,平らな道の上を滑らかに転がることができません.しかし,逆に考えると,歪んだタイヤでも凸凹具合によっては滑らかに転がることができる道があるはずです.そこで,ここでは,ある曲線に付帯する定点(回転軸)が水平線を描く場合の基線となる曲線を求めることにします.

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[1]四角い車輪と懸垂線の道

 四角い車輪が転がる場合について求めてみることにしましょう.1辺の長さが2の正方形の場合,下辺は

  r=−1/sinθ  (-3π/4≦θ≦-π/4)

で表されます.したがって,解くべき方程式は

  dθ/dx=−sinθ  (θ(0)=-π/2)

この方程式は変数分離形ですから,

  ∫(-π/2,θ)1/sinθdθ=−∫(0,x)dx

左辺は

  log(−tan(θ/2))

右辺は−xですから,

  x=−log(−tan(θ/2))

 →exp(−x)=tan(θ/2)

 

 したがって,

  y=1/sinθ=−cosh(x)

すなわち,懸垂線を逆さまにした曲線となります.

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正方形の車輪のついた自転車でも上下に揺れず安定して走ることができる地面の形状は懸垂線(カテナリー)を直線に沿って何個も並べた形であることが確かめられました.カテナリーはひもの両端を固定してぶら下げてできる曲線であって,正方形の車輪のついた自転車の場合,隣り合うアーチが谷で出会ってできる角度は直角になります.

 ちなみに,三角の車輪でも五角の車輪でも地面のなす曲線は懸垂曲線が連なった形で,一般に正n角形の車輪が回転する場合,地面の方程式は,cを定数として

  y=−bcosh(x/b),b=ccot(π/n)

となります.nが多くなればなるほど車輪の形は円に近づき,地面は平坦になっていくのですが,その際,隣り合うカテナリーが谷で出会ってできる角度は(1−2/n)πになります.

 なお,正方形が直線上を回転するとき,正方形の頂点が回転軸となるため,正方形の中心は中心角π/2の円弧を連ねた曲線を描きますが,逆問題ではそれとはまったく異なる曲線(懸垂曲線)が得られたことになります.四角い車輪の場合,辺上の接点と懸垂線とは,伸開線と縮閉線の関係にあるのです.一般に,1辺の長さが2の正n角形の車輪の場合,中心から頂点までの距離はcosec(π/2)ですから,解曲線は

  y=−cosh(x)

  |x|≦log(cot(π/2)+cosec(π/2)) となります.

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