■パウル・シャッツ環とヨハネス・シェンケ環(その4)

ヨハネス・シェンケ先生はすでにペンタドロンの3Dプリンタ模型を完成させている。

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結晶の相転移

結晶格子は不変ではなく,金属結晶に鍛冶(鍛造冶金)を施すと結晶格子といえども不変骨格たり得ず,たとえば面心立方格子(最密充填)から体心立方格子(最疎被覆 )に移行する(相転移)。その途中,単純立方格子を経由しているかもしれない.もちろん個々の原子の振る舞いを直接確認することはできないが,その状態移行では空間の連続的な運動が起こらなければならない.

このことから,面心立方格子(菱形12面体),体心立方格子(切頂8面体),単純立方格子(立方体)を仲介する多面体が存在するはずであると考えるのは自然な発想であろう.さらに6角柱と長菱形12面体も含め,平行多面体全体にまで拡張して,それらをすべて仲介する多面体を求めたい.

面心立方格子と体心立方格子を仲介するメカニズムが存在する(粒子性)

もし,5種類ある平行多面体自身がひとつのブロックで構成できるなら,自然界のレゴ・ブロックは1種類ということになる.そんな都合のいい多面体が存在するかどうか,当初は半信半疑というよりはむしろ懐疑的に思われていたが,そのようなブロックは実在する.

その多面体は奇妙な形の5面体であることから,ペンタドロンと名付けられた.ペンタドロンを元素記号に模してσで表すことにすると,立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体はそれぞれσ12,σ36,σ192,σ384,σ48で構成されることになる.

[定理]平行多面体の元素数は「1」である

面心立方格子と体心立方格子を仲介するメカニズムが存在する(波動性)

デュドニーは正三角形が一瞬にして正方形に等積変形するパズルを提案した.その際,正三角形の表面は正方形の内部に移り,正方形の表面は正三角形の内部の点から構成されている.

それは2次元変身の例であるが,3次元図形である平行多面体でもこのような表裏翻転が可能であることが示される.

[定理]15通りあるすべての平行多面体の対の間で,平行多面体同士のフリップ・フロップ変身が可能である.

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波は空間的に拡がったもの,粒子は集中したもの,波は重なり合い互いに通過する性質があるが,粒子は衝突して方向が変わるものである.波は膨張したり収縮したり「変身」するもの,粒子は「変身」しないものをイメージしていただきたい.そうすると,相転移の粒子性を解き明かすためのモデルが「ペンタドロン」であって,一方,相転移の波動性のメカニズムを解明するためのモデルが平行多面体同士の「変身立体」と考えられるのである.

6個あるいは12個からなるペンタドロンが、エンドレス・キューブのように連続回転することができれば,結晶の相転移モデルの粒子性と波動性を融合させることができるように思えるのである。

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