■ペリトロコイドから掛谷の問題へ(その6)

掛谷の問題

1917年,掛谷宗一は長さが1である線分を1回転させるのに必要な最小面積の図形は何か?という問題を提出した.前述の結果から,掛谷自身も多くの数学者もデルトイド(π/8)が最小値であると予想した.驚いたことに,1927年,ベシコヴィッチによって「前後を方向転換できるいくらでも面積の小さい図形を作ることができる」ことが証明されたのである.ところが,掛谷の問題はこれで終わりではなかった・・・掛谷の問題を星状図形に制限するとどうなるのだろうか?

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星状図形に対する掛谷の問題

星状図形に対してベシコヴィッチ型定理は存在しないことがわかっている.針の回転の可能な星状図形の面積は必ずπ/108以上だからである[1].星状図形に対する掛谷の問題は未解決で,現在知られている最小値は円弧星状図形の場合で

(5-2√2)π/24=0.2842582246・・・〜π/11

は掛谷定数と呼ばれている[2].ここでは,円弧星状図形のほか,ペリトロコイド星状図形・アステロイド星状図形[3]についての結果も併せて紹介したい.

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参考文献

[1] Cunningham F.: The Kakeya Problem for Simply Connected and for Star-Shaped Sets, Amer. Math. Monthly 78(1971), 114-129.

[2] Cunningham F. Schoenberg I.J.: On the Kakeya Constant, Canad. J. Math. 17(1965), 946-956.

[3]ボレリ,リュリエール:「微積分のこころに触れる旅(掛谷の問題に導かれて)」,日本評論社,2019

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