■フルヴィッツのフーリエ級数論(その2)
【1】等周問題
古代ローマの叙事詩「アエネイス」に次のような物語があります.
『ディドーはフェニキアの王女であったが,弟のピグマリオンが彼女の夫を殺して王位に就いたため,臣下たちとともに脱出,地中海に面したアフリカの地に漂着した.その土地の支配者は,一頭の牛の皮を拡げただけの土地を売ってもよいとしぶしぶ約束した.ディドーはこの条件を最大限に活かすために,牛の皮を細く切り3ミリほどのひもにして,地中海の海岸線から半円を描き土地を囲んだ.こうしてカルタゴが建国され,ディドーはカルタゴの女王になった.』
平面凸集合に関して,周の長さLが一定で面積Aが最大の図形(面積が一定で周の最小な図形)は円であるという事実はよく知られています.そのことは
L^2≧4πA
という不等式(等周不等式)で表現されます.等号は円のときだけ成立します.
これは周の長さが一定という付帯条件を課して,面積を最大にするという変分問題の1種であって「等周問題」と呼ばれますが,変分法の起源とみなされている問題で,その答が円であることは古代ギリシャの時代からよく知られています.
ところが,等周問題に厳密な証明が与えられたのは19世紀になってからのことで,シュタイナー(シュタイナー対称化)やシュワルツ,フロベニウスによるものなど,いくつかの証明があります.直観に反して,厳密な証明は簡単ではないのです.フルヴィッツの証明はフーリエ級数を用いたものですが,それについて述べたいと思います.
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