■高次元結晶幾何学の視点から(その3)
ラマヌジャンなど伝説的な数学者の伝記を読むと神がかり的なエピソードがつきものですから、数学者は何でも知っているし何でもお見通しの人種であるとイメージされているかもしれません。実際、数学の世界にはごく稀ですが、高次元の世界をイメージできる人がいます。たとえば、ペトリーは子供の頃から数学に対する異常な能力を示し、4次元図形を直観的に見ることができたといわれています。
しかしながら、3次元の世界を視覚化できるだけでも十分に稀有な能力であって、数学者であっても2次元のイメージで何とかやっている人がほとんどです。
一方、 2次元・3次元の定理であっても、次元あげて4次元空間に一般化することによって初めて本質が見えてくることは少なくありません。 2次元・3次元の事象は4次元空間の一断面になっているからです。
高次元では直観は働きにくいので、誰にとっても(無論私にとっても)とっつきにくい代物です。それでも学べばわかるようになりますし、わかればもっと深く知りたくなります。(人の努力はなかなか実らないが,決して無駄にはならないものである.)
ここではいささか天下り式に与えられたいくつかの数式・関係式、
正三角柱へのはめ込み可能な空間充填四面体の基準 c2=3(b2-a2)
の理解の一助とすべく、高次元結晶幾何学の視点からの補足を試みます。
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ゴールドバーグ基準の一般化
3a2-3b2+c2=0 (Δ2 prism, Goldberg)
4a2-6b2+4c2-d2=0 (Δ3 prism)
5a2-10b2+10c2-5d2+e2=0 (Δ4 prism)
6a2-15b2+20c2-15d2+6e2-f2=0 (Δ5 prism)
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何がいいたいかというと、これらはn次元のSommerville単体のk次元面になっているということである。
その辺長は
dij2=|PiPj|2=(j-i)(n+1+i-j), iで与えられる。
そして、n次元のBoerdijk-Coxeterらせんとn次元のSommerville単体間の相転移 の不変量(非等長変換の不変式)は、ハーレーの方程式
2λ+2=0 (α2 helix)
3λ2+4λ+3=0 (α3 helix)
4λ3+6λ2+6λ+4=0 (α4 helix)
5λ4+8λ3+9λ2+8λ+5=0 (α5 helix)
の係数k(n+1-k) に等しい。
これで(その1)と(その2)が結びついている。
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