■用紙サイズと化学肥料(その2)

私は地方のがんセンターに勤務する病理医であり、医学部・薬学部ではがんの遺伝子診断から治療までを講義担当している。

40年以上前の私が医学生の頃は抗がん剤治療というと「ガンは消えた。されど患者は死んだ」といった一か八かの手段であった。

現在、抗がん剤(とくに肺癌領域の抗がん剤)は副作用が軽減され、その分、有効性はかなり高まっている。

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抗がん剤の副作用は、もともとそれが毒ガスに起源をもつものであったり、種なしブドウや種なしスイカを作るための農薬に由来することに起因している。

細胞障害を惹起・細胞分裂を阻害するという生物学的作用をがん治療用として転用しているからである。

(その1)ではそのことについて述べたが、医学の講義でまだ話せないでいる黒歴史がある。

それは日本の医学者が直接関与した「関東軍731部隊」のことである。

731部隊ではおびただしい数量の生物兵器・化学兵器を生産した。

ナチスドイツでもそうであったのであるが、遠藤周作の「海と毒薬」さながらの生体解剖も行われているし、

自衛隊は戦後70年以上たったいまでも、旧満州某所でこれらの無毒化の任務にあたっている。

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戦後、731部隊の医学者たちは生物兵器・化学兵器のデータをアメリカ軍に提供し、戦争犯罪に関しては免責となった。

アメリカ軍に免責を引き換えに実験データを売り渡したといってもよいのである。

ある医学者は小生の在籍した病理学教室の教授となり、ある医学者は(のちに戦後最大の薬禍を引き起こすことになる)製薬会社を創業した。

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森村誠一「悪魔の飽食」にはこれらの医学者が実名で登場する。

作家・森村誠一氏の意図するところは彼らを告発することではなく、戦争を知らない世代であっても日本人一人一人が知っておくべき事実、忘れてはならない事実なのだと思う。

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