■スピログラフ(その1)

【1】スピログラフ

 回転円が固定円に接して滑ることなく転がっていくとき,回転円の周上の点の軌跡を考えよう.回転円が固定円に外接するとき,その軌跡をエピサイクロイド,内接するとき,ハイポサイクロイドと呼ぶ.

 かつて,娘達は歯車の穴に鉛筆を差し込んでクルクル回転させると花びら模様が描かれるおもちゃに夢中であった.これをスピログラフというらしい.この装置がハイポサイクロイドの応用であることはすぐに理解される.固定円と回転円の半径比R/rが無理数なら曲線は決して閉じないから,有理数倍になっているのであろう.

 たとえば,ギア比を1:3に固定し穴の位置を変えてエピトロコイドとハイポトロコイドを描いてみると惑星の軌道を想起させるような図形が描かれる.

 ハイポサイクロイドで,R/r=4の場合(固定円の半径が回転円の半径の4倍になっている場合)がアステロイド(星形曲線)である.

  x^2/3+y^2/3=R^2/3

アステロイドはx,y軸上に端点のある長さRの線分により作られる包絡線であり,また,長半径と短半径の和がRである楕円

  x^2/a^2+y^2/(R−a)^2=1

の包絡線ともなっている.アステロイドが囲む周長は6Rであるが,サイクロイドと同様,定数πに依存していない.また,面積は3πR^2/8で,固定円の面積の3/8(回転円の6倍)である.

 一方,エピサイクロイドは地球から見たときの惑星の逆行運動の説明に用いられた曲線で,古代ギリシア人は,惑星の動きを表現するために周転円(円の周りをまわる円)を考えていたことが知られている.

 エピサイクロイドで,R/r=1の場合(固定円と回転円の半径が等しい場合)がカージオイド(心臓型曲線)である.カージオイドは定円上に中心があり,カスプを通るような円の包絡線でもある(周長16R,面積6πR^2).

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