■細矢インデックス(その43)

【4】セルオートマトンとシェルピンスキーの三角形

ところで,多くの人は,貝殻を拾い上げてその着色パターンに驚嘆した覚えがあろう.貝殻それぞれが独特の美しさをたたえているが,そのパターン形成の仕組みはわかっていない.まるで科学者に対して挑んでいるかのように思えるこの問題の数学的解答がセルオートマトンである.

二項係数が奇数である場合にそのセルを黒くするとセルオートマトンで与えられるようなネスト型の三角形パターンを生成する.このパターンは貝殻などにみられるモザイク模様であって,シェルピンスキーの三角形と呼ばれる.チューリングは数理生物学の基礎を形作ったひとりであるが,セルオートマトンによって,トラやシマウマの毛皮の独特の模様が形成される過程を数学的に説明することに成功したのである.

シェルピンスキーの三角形は,正三角形の各辺の中点をつないで,4つの小正三角形に分割し,真ん中を取り去り,残った3つの正三角形を同じように4つに分割して各々真ん中の三角形を取り去って,また分割していく動作を無限に繰り返してできる図形である.シェルピンスキーの三角形はフラクタル図形であって,そのフラクタル次元は,

 log3/log2=1.585・・・

である.シェルピンスキーがこの三角形を発見したのは1915年である.この事実は,パスカルの三角形にはまだ新たな発見があり得ることを示している.

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