■絶対収束と条件収束(その2)

 これらは無限のパラドックスの一つの例である.有限級数ならば,足し算の順序に入れ替えは自由にできるが,無限級数となると話はまったく違ってくる.正の項と負の項がいずれも絶対収束するとき,級数の和の順番は勝手に変えてもよいのであるが,そうでない場合は,足す順序によっては級数の和が異なってくる.実は,条件収束級数の場合,級数の項の順番を適当に変えるとどんな値にでも収束させることができることが知られている.

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一般に,

  1/1−1/2+1/3−1/4+・・・=log2

の項の順序を,正の項をm個,負の項をn個ずつ交互に並べ替えてできる級数の和は

  log2+1/2・logm/n

となる.

[1]m=2,n=1→3/2log2

[2]m=1,n=2→1/2log2

すなわち,この級数は項を足す順序を変えるだけで,カメレオンのようにどんな値にでも・・・297.126でも−42πでも0でもお好みの実数になれるのである.たとえば,0にしたいならば

  2log2+logm/n=0→m=1,n=4

 有限の和ではこのようなことは絶対に起こらないが,無限の和では加法の交換法則が成り立たないような,想像もつかない奇妙なことが起こるのである.

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