■カオスとフラクタル(その6)

 フラクタルとは有限の空間に無限の集合がたたみこまれたもので,ロシアのマトリョウシカ人形のように相似形が入れ子構造になっていて,拡大すると自己相似パターンが認められるものを指します.いくらでも小さいスケールで自分自身を再現するパターン,いたるところで微分不可能な連続曲線といったほうがわかりやすいかもしれません.

フラクタル構造はいたるところで微分不可能な(導関数をもたない)連続曲線という病理的な性質をもっていて,カオスの軌道を拡大するとそこには拡大前と類似の自己相似パターンが認められることから,カオスとフラクタルは密接に関連しています.

フラクタル構造の代表例が,ガラスのひび割れ,雪の結晶,金平糖の角の造形成長パターンなどです.フラクタル構造を解明することによって,たとえば,木のような構造をもつ気管支の形態と機能の生物学的発達が説明できたり,また,銀河は宇宙上に一様に生ずるのではなく,むしろクラスターとして存在していますが,宇宙のフラクタル構造の解明がその起源の理解に導いてくれます.

フラクタル幾何学の父と呼ばれるマンデルブロは,星々がフラクタル的に凸凹に配列されている宇宙モデルを提唱しました.もしそうならオルバースのパラドックスはビックバン理論なしでも解決できるからです.ユークリッド幾何学が宇宙の滑らかさを表しているのに対して,フラクタル幾何学は宇宙のデコボコをよく表しているといわれる所以です.

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