■ディリクレの素数定理

素数定理には,ディリクレの算術級数定理などいろいろなバリエーションがあります.素数定理(PT)は,漸近分布の形で

  π(x)〜x/logx

と表すことができます.素数は無限個存在し,そして等差数列{a+kn}にも素数は無限に含まれるのですが,素数pでa+knの形のものの分布問題がディリクレの算術級数定理です.

  π(x;a,n)〜C・x/logx   C=1/φ(n)

 

 算術級数定理は素数定理を精密化したもので,初項aの取り方にはよらないのですが,ここで,オイラーの関数φ(n)は1からn−1までの整数のうち,nと互いに素になるものの個数

  φ(n)=#(Z/nZ)

として定義されます.たとえば,n=7の場合,1,2,3,4,5,6なのでφ(7)=6,n=10の場合1,3,7,9がそうなのでφ(10)=4となります.

 1760年頃,オイラーは,数nが素因数p,q,r,・・・をもつときに,それらの重複度にかかわらず,

  φ(n)=n(1−1/p)(1−1/q)(1−1/r)・・・

であることを示しました.この原理は「エラトステネスのふるい」によっているのですが,たとえば,10=2・5,44=2^2・11,100=2^2・5^2より,

  φ(10)=10(1−1/2)(1−1/5)=4

  φ(44)=44(1−1/2)(1−1/11)=20

  φ(100)=100(1−1/2)(1−1/5)=40

また,任意の素数pに対して,

  φ(p^n)=p^n(1−1/p)

したがって,

  φ(p)=p(1−1/p)=p−1

となります.

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算術級数定理は,たとえば,4で割って1余る素数と4で割って3余る素数はいずれも無数に存在し,それらは素数全体のほぼ半数ずつを占めるという内容になっています.

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