■数の幾何学(その38)

(Q)正方格子Z^2の格子点3個を選んで正三角形を作ることは可能か?

 この問題は不定方程式

  x^2+y^2=z^2+w^2=(x−z)^2+(y−w)^2

を解くことと同じである.

 一般に,どのようなnに対して正n角形が作れるかについては,正方格子の代わりに正三角形格子ではどうなるか? 立方格子では・・・? m次元格子では・・・?と発展展開させることができる.さて,答は・・・?

===================================

【1】シェレルの定理

  n≧5,n≠6のとき,Z^3内の格子正n角形は存在しない(シェレルの定理,1946年)

その系として

  「n≧5,n≠6のとき,Z^2内の格子正n角形は存在しない.」

 証明は驚くほど簡単である.

  前原濶,桑田孝泰「知っておきたい幾何の定理」共立出版

を参照された.

===================================

【2】格子正三角形の場合

  「Z^2上で格子正三角形は存在しない」

(証)格子正三角形の頂点を(a,b),(0,0),(c,d)としても一般性は失われない.

  [c]=[cosπ/6,−sinπ/6][a]

  [d] [sinπ/6, cosπ/6][b]

 cosπ/6=1/2,sinπ/6=√3/2.(a,b)は整数より,(c,d)のいずれかは無理数となり矛盾.

  系「Z^2上で格子正六角形は存在しない」

  系「Z^2で格子正n角形は正方形に限る」

 ところが,

   「Z^3上で格子正六角形が存在する」

(証)1辺の長さが2の立方体の6辺の中点を結ぶと格子正六角形が得られる.

  系「Z^3上で格子正三角形が存在する」

シェレルの定理より

  系「Z^3上の格子正n角形は正三角形,正方形,正六角形だけである」

===================================