■ヤコビの恒等式(その4)

ラマヌジャン関数は楕円曲線の判別式と呼ばれ,ある整数が24個の平方数の和として表される方法の数に関係している.ある数がk個の平方数の和として表されるとき,いくつの異なった方法でこれを表すことができるか? たとえば,nが24個の平方数の和として表されるとき,何通りの方法で24個の平方数の和として表すことができるか? たとえば,

[Q]6を平方数の和に表す方法は何通りあるか?

[A]1+1+1+1+1+1,1+1+4の2通り

と答えるのが普通であろう.しかし,0^2を許容し,さらに,a^2と(−a)^2を異なる方法として数える.また,順序が異なるもの(a^2+b^2とb^2+a^2)を区別して数えることにすると,

[Q]6を24個の平方数の和に表す方法は何通りあるか?

[A]r(6)=8662770

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ところで,

 n=x^2+y^2+z^2+w^2

[1]x,y,z,wには負でない整数のみを許す

[2]x,y,z,wには正,負,0のすべての整数を許す

という2つの立場がある.

[1]の立場をとると

  (1+x+x^4+x^9+・・・)^4

[2]の立場をとると,テータ関数

  (1+2x+2x^4+2x^9+・・・)^4

を適用することになる.

なお、ヤコビはテータ関数の研究から得られた深遠な恒等式を証明した。

(1+2x+2x^4+2x^9+2x^16+・・・)^2

=1+4(x/(1-x)-x^3/(1-x^3)+x^5/(1-x^5)-・・・)

任意の整数は4つの平方数の和で表される(ラグランジュの定理)では前者の立場をとっているが,後者の立場の数え方によりモジュラー形式の理論を用いることができるようになり,この難しい問題は楕円曲線とモジュラー形式の理論の発見に導いた.

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 1728で割る理由はできるため係数を簡単にするためであるが,

1728=3・240+2・504=2^6・3^3

は2と3だけを含む素因数分解をもつ.一方,オイラーの分割数p(n)の合同式

  p(5n+4)=0  (mod5)

  p(7n+5)=0  (mod7)

  p(11n+6)=0  (mod11)

ここで関係している素数は12より小さい12を割らない素数であるが,2,3に等しくないという事実は楕円曲線の判別式Δが重み12をもつことに関係している.

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保型性を示しているという事実が,モジュラー関数は深淵といわれる所以である.ワイルズによって証明されたフェルマーの最終定理の本質的な方法はモジュラー形式を用いたものであった.フェルマーの最終定理の別証明はまだ発見されていない.

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