■数の幾何学(その13)
【3】√3のディオファントス近似とペル方程式
an^2−3bn^2=−1
は解をもちませんが,
an^2−3bn^2=1
が成り立つ最小解は(a,b)=(2,1)であることから,√3に収束する分数列を構成すると
(2+√3)^n=an+bn√3
(2−√3)^n=an−bn√3
より
an+1+√3bn+1=(2+√3)(an+√3bn)
=(2an+3bn)+√3(an+2bn)
an+1=2an+3bn
bn+1=an+2bn
an+1=4an−an-1,bn+1=4bn−bn-1
α,βを2次方程式x^2−4x+1=0の根2±√3として,初期値をa1=1,a2=2,a3=7,b1=0,b2=1,b3=4とすると
an/bn→ √3
となります.
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実際に確かめてみましょう.
a1=1,b1=1
an+1=2an+3bn
bn+1=an+2bn
を繰り返す.
[Q]このとき,an/bn→?
[A]
a1=1,b1=1,a1/b1=1
a2=5,b2=3,a2/b2=1.6666666
a3=19,b3=11,a3/b3=1.7272729
a4=71,b4=41,a4/b4=1.7317073
a5=265,b5=153,a5/b5=1.7320261
a6=989,b6=571,a6/b6=1.732049
an/bn→√3
別法では
(2+√3)^2=7+4√3
(2+√3)^3=26+15√3
(2+√3)^4=97+56√3
(2+√3)^5=362+209√3
(2+√3)^6=1351+780√3より,
√3<1351/780<362/209<97/56<26/15<7/4
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[補]アルキメデスはπの近似値を
3・10/71<π<3・10/70
であることを示したが,√3の近似値も与えている.
1351/780<√3<265/153
25・51/52<15√3<25・50/51
これらは
1351^2−3・780^2=+1
265^2−3・153^2=−2
を満たす.このことからアルキメデスはペル方程式を知っていたと考えられているが,ペル方程式x^2−3y^2=1を解くのに用いられたのは以下のような再帰的方法だったと思われる.
1=(x+√3y)(x−√3y)
1^2=(x+√3y)^2(x−√3y)^2
={x^2+3y^2}^2−3{2xy}^2
したがって(x0,y0)が解ならば
(x0^2+3y0^2,2x0y0)
も解となる.
(2,1)は解なので(7,4)も解.
(7,4)は解なので(97,56)も解.
これを続けると
265/153<√3<1351/780
が得られる.
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[補]x^2−3y^2=−1は整数解をもたない.
(証) (2n+1)^2=4n(n+1)+1=8m+1
すなわち,奇数の平方を8で割ると1余ることになる.
また,x^2−3y^2=−1の(x,y)の奇偶は一致しない.
(奇,奇)→x^2−3y^2は偶数
(偶,偶)→x^2−3y^2は偶数
[1](奇,偶)と仮定すると
x^2を4で割ると1余る,−3y^2を4で割ると割り切れる
x^2−3y^2を4で割ると1余る→右辺=−1は不可能
[2](偶,奇)と仮定すると
x^2を4で割ると割り切れる,−3y^2を4で割ると1余る
−3y^2=−3(8m+1)=4(−6m+1)+1
x^2−3y^2を4で割ると1余る→右辺=−1は不可能
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