■数の幾何学(その8)

【6】ヤコビのテータ関数

ある数がk個の平方数の和として表されるとき,いくつの異なった方法でこれを表すことができるか?という問題を考えます.ただし,

 4=(±1)^2+(±1)^2+(±1)^2+(±1)^2   16通り

 4=(±2)^2+0^2+0^2+0^2            +8通り

のように,0^2を許容し,さらに,a^2と(−a)^2を異なる方法として数える.また,順序が異なるもの(a^2+b^2とb^2+a^2)を区別して数えることにする(・・・と,モジュラー形式の理論を用いることができる.)

 rk(n)をk個の平方数の和としてnを表す方法の個数とするとr4(4)=24.

また,r2(0)は,0=0^2+0^2しかないからr2(0)=1

 r2(1)は,1=(±1)^2+0^2

すなわち,1=1^2+0^2=0^2+1^2=(−1)^2+0^2=0^2+(−1)^2より,r2(1)=4

 nが24個の平方数の和として表されるとき,何通りの方法で24個の平方数の和として表すことができるか?という問題ではn=6の場合でも

r24(6)=8662770

 この難しい問題は母関数とモジュラー形式の理論の発見に導いた.  この出発点となった考え方は,t=4の場合,

  {Σq^(n^2)}^4=Σr(n)q^n

   =1+8nq^n/(1-q^n)

の2つの表現のq^nの係数を比較することであって,Σq^(n^2)はテータ関数です.

そして,母関数を

  Fk(x)=rk(0)+rk(1)x+rk(2)x^2+rk(3)x^3+・・・

ヤコビのテータ関数を

  θ(q)=Σq^m^2=1+2q+2q^4+2q^9+・・・,q=exp(2πiz)

とする.zが上半平面上を動く変数であるとき,

  q(z)=exp(2πiz)

は原点を中心として半径1の単位円板から原点を除いた穴あき単位円板上を動く.q(z+1)=q(z)

すなわち,周期1をもつという性質がある.

1次元格子で考えると,長さの2乗(ノルム)が0のベクトルが1個,ノルムが1のベクトルが2個,ノルムが4のベクトルが2個,ノルムが9のベクトルが2個と数えていけば,1次元格子のテータ関数は

1+2q+2q^4+2q^9+・・・

であり,t次元格子では

  θ(q)^t={Σq^m^2}^t=Σrt(n)q^n

2次元正方格子のテータ関数は

1+4q+4q^2+4q^4+8q^5+・・・

3次元正方格子のテータ関数は

1+6q+12q^2+8q^3+6q^4+・・・

r(n)を求めるのに,ヤコビはテータ関数を用いたのですが,それ以来,モジュラー形式などの解析的理論が数論へ応用されるようになりました.ヤコビは2,4,6,8個の平方の和に分解する仕方の数,エルミートは3,5個の平方の和に分解する仕方の数を得ています.

24個の平方の和に分解する仕方の数は

r24(n)=16σ11(n)/691−128{512τ(n/2)+(−1)^n259τ(n)}/691

〜16σ11(n)/691

と表すことができます.

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