■数の幾何学(その3)

【1】ミンコフスキーの数の幾何学(格子点定理)

 ミンコフスキーはアインシュタインの先生として有名で,相対論における基本概念はミンコフスキーにその起源をたどることができます.時空4次元世界による特殊相対論の表現は,アインシュタイン自身によるというよりも,彼のETH時代の恩師にあたるミンコフスキーの業績というべきでしょう.

彼は数論家として出発しましたが,研究を進めるにしたがって次第に幾何学に興味を惹かれるようになり,幾何学的方法を用いて数論を研究する「数の幾何学」と呼ばれる新しい数学分野を打ち立てました.格子点定理が数の幾何学の基礎となっているのですが,格子点定理は次のように述べることができます.

 

「平面(n次元空間)上の任意の単位格子において,1つの格子点を中心として1辺の長さが2の正方形(面積4の平行四辺形,面積2^nの中心対称な凸体)を任意の向きにおいてみると,内部あるいは境界上にもうひとつの格子点が必ず存在する.」

 N=4のとき√N=2ですから,4次元超球を使って,ミンコフスキーの定理からラグランジュの定理が成り立つことがいえるのです.

この定理は非常に単純であるにもかかわらず,他の方法では解決することのできなかった数論における多くの問題を解明したのですが,格子点定理を用いると,初等的な定理,たとえば,

  「4k+1の形の素数はx^2^+y^2の形に書ける」

  「6k+1の形の素数はx^2^+3y^2の形に書ける」

  「8k+1の形の素数はx^2^+2y^2の形に書ける」

なども証明することができます.2次形式の理論が発展していく段階では,ミンコフスキーが非常に大きな貢献をしていて,格子点の幾何学はミンコフスキーの「数の幾何学」に端を発するのです.

また,(その2)の「規則正しい森の問題」ではミンコフスキーの定理を使って,原点に立っている人がこの森の外を見ようとしても見えないことが証明されます.

(証明) 見えると仮定すると,幅0.16の帯が原点以外の格子点を含まないということになるが,面積は0.16・26=4.16>4であるから,ミンコフスキーの定理に矛盾することになる.

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