■中央二項係数とカタラン数(その11)

【1】ポリアの定理

 

 ポリアの定理の証明は,通常,n→∞のときの原点にいる確率の漸近挙動を調べることによって行われます.2nステップのとき,原点にいる確率をu2n,原点への最初の復帰が2n回目に起きるという確率をf2nとすると,求める再帰確率はΣf2nで表されます.

 

 ここで母関数を使った少し込み入った議論が必要になるのですが,母関数の方法の利点は,個々の数列ごとに工夫しなくても,一般項が求まることにあり,有限グラフ上の閉路で,途中で出発点に戻ることのない閉路の数と,何度戻ってもよい閉路の数との間の関係式を求めるという問題になります.

 

 結論だけをいうと,n→∞のとき,

  Σf2n=(Σu2n−1)/Σu2n=1−1/Σu2n

が成り立ちます.Σu2n=∞のときにはΣf2n=1,すなわち,ランダムウォークは再帰的,また,Σu2n<∞のときにはΣf2n<1で非再帰的となります.そこで,Σu2nの値を求めてみることにします.

 

 1次元酔歩の場合,

  u2n=2nCn/2^(2n) 〜 (πn)^(-1/2)

  Σu2n=∞(再帰的)

2次元酔歩の場合,

  u2n=1/4^(2n)(2nCn)^2  〜 (πn)^(-1)

  Σu2n=∞(再帰的)

 

 それに対して,3次元酔歩では

  u2n=cn^(-3/2) 〜 (πn)^(-3/2)

  Σu2n<∞(非再帰的)

よって,3次元酔歩は非再帰的.同様にして,4次元以上の酔歩は

  u2n 〜 (πn)^(-d/2)

  Σu2n<∞(非再帰的)

より非再帰的であることが示されます.

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 以上をまとめると,

  格子の次元  (1,2)  (3,4,5,6,・・・)

   酔歩     再帰的       非再帰的

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