■整数の平方根の連分数(その10)

[1]基本単数

 まず最初に,実2次体Q(√m)の基本単数について説明することから始めたいと思います.Q(√m)を2次体とするとき,a+b√mの共役をa−b√mで表します(m<0ならば通常の複素共役である).このとき,その標準底は

  ω=√m         m=2,3(mod4)

  ω=(1+√m)/2   m=1(mod4)

で与えられます.

 そして,単位元「1」の約数を単数といいます.m>0のとき,単数群は

  {±1}×C(Cは乗法的巡回群)

によって与えられます.また,εをε>1なる最小の単数とするとき,

  C={±ε^n}

と表すことができ,εをQ(√m)の基本単数といいます.

 実2次体の基本単数は一意に定まります.Q(√m)を実2次体とすると,

[a]m=2,3(mod4)のとき

 基本単数を

  ε=a+b√m

とすると

  ε~=a−b√m

εが単数←→εε~=a^2−mb^2=±1

また,

  ε^n=an+bn√m

と書くと

  ε^(n+1)=ε・ε^n=(a+b√m)(an+bn√m)

      =aan+bbnm+(abn+ban)√m

 これより

  an+1=aan+bbnm

  bn+1=abn+ban

 このことから0<a1<a2<・・・,0<b1<b2<・・・となるのですが,より,a,bはペル方程式:

  a^2−mb^2=±1

の解の中で(a,b)が最小なものとして与えられます.ペル方程式の自明な解(a=±1,b=0)には単数±1が,自明でない解のなかで絶対値|a|または|b|が最小なものには基本単数が対応するというわけです.

 Q(√2),Q(√3),Q(√6),Q(√7)の基本単数を求めると,それぞれ,

  x^2−2y^2=±1,複号は−1で(1,1)が最小→ε=1+√2

  x^2−3y^2=±1,複号は+1で(2,1)が最小→ε=2+√3

  x^2−6y^2=±1,複号は+1で(5,2)が最小→ε=5+2√6

  x^2−7y^2=±1,複号は+1で(8,3)が最小→ε=8+3√7

[b]m=1(mod4)のとき

 基本単数を

  ε=(a+b√m)/2   a=b(mod2)

と書けば

  a^2−mb^2=±4

となること以外は前と同様です.

 Q(√5),Q(√13)の基本単数を求めると,それぞれ,

  x^2−5y^2=±4,複号は−4で(1,1)が最小→ε=(1+√5)/2

  x^2−13y^2=±4,複号は−4で(3,1)が最小→ε=(3+√13)/2

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 Q(√2)ではε=1+√2が基本単数ですが,その他の解は

  (1+√2)^n=an+bn√2

とおいて

  n=1:1^2−2・1^2=−1

  n=2:3^2−2・2^2=+1

  n=3:7^2−2・5^2=−1

  n=4:17^2−2・12^2=+1

  n=5:41^2−2・29^2=−1

  n=6:99^2−2・70^2=+1

  n=7:239^2−2・169^2=−1

  n=8:577^2−2・408^2=+1

  n=9:1393^2−2・985^2=−1

  n=10:3363^2−2・2378^2=+1

一般に,

  an^2−2bn^2=(−1)^n

となります.

 Q(√3)ではε=2+√3が基本単数で,

  n=1:2^2−3・1^2=+1

  n=2:7^2−3・4^2=+1

  n=3:26^2−3・15^2=+1

  n=4:97^2−3・56^2=+1

  n=5:362^2−3・209^2=+1

  n=6:1351^2−3・780^2=+1

  n=7:5042^2−3・2911^2=+1

  n=8:18817^2−3・10864^2=+1

  n=9:70226^2−3・40545^2=+1

  n=10:262087^2−3・151316^2=+1

一般に,an^2−2bn^2=1でan^2−2bn^2=−1となる解は存在しません.

 この2つの例からわかるように,基本単数εのノルムが−1のときには

  x^2−my^2=+1

  x^2−my^2=−1

はどちらも無数の解をもちますが,εのノルムが+1のときには解はすべて前者の解であって,後者は解をもちません.

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 以下,実2次体Q(√m)の基本単数εを掲げますが

m  ペル方程式の最小解        ε           ノルム

2  1^2−2・1^2=−1       1+√2         −1

3  2^2−3・1^2=+1       2+√3         +1

5  1^2−5・1^2=−4       (1+√5)/2     −1

6  5^2−6・2^2=+1       5+2√6        +1

7  8^2−7・3^2=+1       8+3√7        +1

10  3^2−10・1^2=−1      3+√10        −1

11  10^2−11・3^2=+1     10+3√11      +1

13  3^2−13・1^2=−4      (3+√13)/2    −1

14  15^2−15・4^2=+1     15+4√14      +1

15  4^2−15・1^2=+1      4+√15        +1

17  8^2−17・2^2=−4      4+√17        −1

19  170^2−19・39^2=+1   170+39√19    +1

21  5^2−21・1^2=+4      (5+√17)/2    +1

22  197^2−22・42^2=+1   197+42√22    +1

23  24^2−23・5^2=+1     24+5√23      +1

26  5^2−26・1^2=−1      5+√26        −1

29  5^2−29・1^2=−4      (5+√29)/2    −1

30  11^2−30・2^2=+1     11+2√30      +1

31  1520^2−31・273^2=+1 1520+273√31  +1

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