■制限のある分割から(その9)
ヤコビの3重積公式はテータ関数そのものを表しているのであって,これから
Σ(-1)^n・q^(n^2)=(q;q)∞/(-q;q)∞
Σq^(n(n+1)/2)=(q^2;q^2)∞/(q;q^2)∞
Σq^(k^2)/(q;q)k=1/(q;q^5)∞(q^4;q^5)∞
Σq^(k(k+1))/(q;q)k=1/(q^2;q^5)∞(q^3;q^5)∞
Σq^(k^2)/(q;q)2k=1/(q;q^2)∞(q^4;q^20)∞(q^16;q^20)∞
Σq^(k(k+2))/(q;q)2k+1=1/(q;q^2)∞(q^8;q^20)∞(q^12;q^20)∞
Σq^(k^2)/(q;q)k(q;q)n-k=Σ(-1)^k・q^{(5k^2-k)/2}/(q;q)n-k(q;q)n+k
Σ2q^(k^2)/(q;q)k(q;q)n-k=Σ(-1)^k・(1+q^k)q^{(5k^2-k)/2}/(q;q)n-k(q;q)n+k
などの恒等式が得られる.
このうち,後6者のq恒等式
Σq^(k^2)/(q;q)k=1/(q;q^5)∞(q^4;q^5)∞
Σq^(k(k+1))/(q;q)k=1/(q^2;q^5)∞(q^3;q^5)∞
Σq^(k^2)/(q;q)2k=1/(q;q^2)∞(q^4;q^20)∞(q^16;q^20)∞
Σq^(k(k+2))/(q;q)2k+1=1/(q;q^2)∞(q^8;q^20)∞(q^12;q^20)∞
Σq^(k^2)/(q;q)k(q;q)n-k=Σ(-1)^k・q^{(5k^2-k)/2}/(q;q)n-k(q;q)n+k
Σ2q^(k^2)/(q;q)k(q;q)n-k=Σ(-1)^k・(1+q^k)q^{(5k^2-k)/2}/(q;q)n-k(q;q)n+k
はロジャース・ラマヌジャン恒等式と呼ばれるものの例である.
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【1】分割恒等式
任意の正の整数に対して,ある一定の条件を満たす分割と別の分割が同数存在するという主張を分割恒等式といいます.1948年,オイラーは異なる数への分割と奇数への分割が同数あるという注目すべき結果を証明しています.例えば5を異なる数に分割するのは5,4+1,3+2の3通り,奇数に分割するのは5,3+1+1,1+1+1+1+1の3通りというわけです.
オイラーの分割恒等式が最初のものですが,分割恒等式はいくらでも存在し,ここに掲げたもの以外にも多くの予期せぬ分割恒等式が存在するのです.
[1]ロジャーズ・ラマヌジャンの第1恒等式
「1の位が1,4,6,9の数への分割と各因子の差が2以上ある分割とは同数ある.」
1の位が1,4,6,9の数とはmod5で±1と合同になる整数のことです.例えば5を1,4,6,9に分割するのは4+1,1+1+1+1+1の2通り,各因子の差が2以上ある分割は5,4+1の2通り.
この分割恒等式はロジャーズ(1894),また彼とは独立にラマヌジャン(1913)によって得られました.ロジャース・ラマヌジャン恒等式は,最初ロジャースにより発見されたのですが,誰の興味も惹かず忘れ去られていたところ,ラマヌジャンにより別証明が与えられたというわけです.
[2]ロジャーズ・ラマヌジャンの第2恒等式
「1の位が2,3,7,8の数への分割と因子は2以上で各因子の差が2以上ある分割とは同数ある.」
これはmod5で±2と合同になる整数のことです.例えば5を2,3,7,8に分割するのは3+2の1通り,因子は2以上で各因子の差が2以上ある分割は5の1通り.
[3]シューアの分割恒等式
「mod6で±1と合同になる整数への分割と,各因子の差が3以上あり,連続する3の倍数を含まないような分割とは同数ある.」
例えば5をmod6で±1と合同になる整数に分割するのは5の1通り,各因子の差が3以上あり,連続する3の倍数を含まないような分割は5の1通り.
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