■整数の拡大と素因数分解の一意性(その17)
【5】ヴィーフェリッヒの定理
次のブレークスルーは,ヴィーフェリッヒの定理(1909年)です. 「フェルマー方程式x^p+y^p=z^pが非自明解をもつためには,pはヴィーフェリッヒ素数であることが必要である」
ヴィーフェリッヒ判定基準とは
(2^(p-1)−1)/p=0 (mod p)
すなわち,2^(p-1)−1はp^2で割り切れるというものです.フェルマーの小定理より(2^(p-1)−1)/pは整数となりますが,非常に稀にこの整数がpの倍数になることがあり,そのときpをヴィーフェリッヒ素数といいます.
ヴィーフェリッヒの定理
フェルマー方程式x^p+y^p=z^pが非自明解をもつためには,pはヴィーフェリッヒ素数であることが必要である.
(2^(p-1)−1)/p=0 (mod p)
ヴィーフェリッヒ素数はp=1093,3511が知られています.2つのヴィーフェリッヒ素数−1を2進数に変換すると
1092=10001000100
3510=110110110110
のように奇妙なパターンがみられるのだそうです.
ヴィーフェリッヒの定理により,フェルマーの最終定理の証明は驚くほど簡単になりました.6・10^9以下ではp=1093,3511だけがこの判定基準を満たし.xyzがpで割り切れない場合,この2つについてだけ調べればよいことになるからです.
[補]フェルマーの小定理より,pを素数とすると,pは常に2^(p-1)−1を割り切る.
2^(p-1)−1=0 (mod p)
[Q]p^2が2^(p-1)−1を割り切るような素数pはあるだろうか?
2^(p-1)−1=0 (mod p^2)
[A]ヴィーフェリッヒ素数はp=1093,3511が知られています.
2^1092−1は1093^2で割り切れる.
2^3510−1は3511^2で割り切れる.
一方,
2^(p-1)−1≠0 (mod p^2)
すなわち,ヴィーフェリッヒ素数でない素数は無限個あることが示されている(実際にはヴィーフェリッヒ素数はいまのところ1093と3511しか知られていない).
[Q]p^3が2^(p-1)−1を割り切るような素数pはあるだろうか?
2^(p-1)−1=0 (mod p^3)
そのような性質を満たすpをひとつ見つけるだけでよいので,易しい問題に思えるかもしれない.しかし,この問題はなお未解決である.
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